「性的人身取引」
シドハース・カーラ　著

新年早々暗澹となる気持ちの
本を読んでしまいましたが、私が
なぜこのようなものを読むかというと
まずは新聞評を読んだのがきっかけですが
彼女たちに起きた悲劇は
私の身に起きたかもしれないと思うから
ですね。

もちろん自分はわずかの金銭で
親に売られたり、貧困から
出稼ぎしようと思うところを
騙されて性奴隷にされるような環境で
育っていませんが、同じ地球上の
同じ女性の話なので、やはり
自分ごとに置き換えて考えてしまいますね。

インド系アメリカ人である
作者のフィールドワークによると
最大の悪は貧困だということですから
社会の有り様や政治がまずいってことですね。

汚職に満ちた政治家に
賄賂でどうにでもなる警察官。

売春宿が摘発されたところで
性奴隷を酷使しての商売は
課される罰金の数百倍の旨味がある。

多くの国で女性は
学びの機会を与えられず
家族の犠牲になる。

家族を養っていくためだと
自分に言い聞かせてその状況に
甘んじる女性もいる。

グローバル化とやらで、貧しい国の女性を
他国へポンポン移動させられるように
なったことも、人身売買に拍車がかかった
要因のようです。

性奴隷による売春産業で
ものすごくお金が回っていて
甘い汁を吸う男たちがいるので
この状況は変わりません。

女は犯されても売られても
訴えることもできない。
犯したり売ったりする側の男たちが
法律を作ってるから。

これ100年前の話じゃないんですよね。
2000年以降のレポートですから。

著者は、この状況を打開するために
人身売買や売春の罰則を強化すれば、とか
貧しい国の人には、甘言にのって
外国へ職を求めないよう啓発しよう、とか
色々な方法を考え、示してくれていますが
そんなふうにすぐに改善されたりは
しないのだろうな、と
この本を読んだ人なら誰でも思うでしょう。

セックスワークに売られた人だけでなく
工場に売られたり、絨毯を織らされたり
漁船に乗せられたりして
搾取され続けた人たちの話も書いてあります。

インド、イタリア、アメリカ合衆国、様々な
国の状況が報告される中
日本は事例として本書には登場しませんが
手数料を払ってがんじがらめにされる
低賃金、長時間労働、働く場所を選べない
技能実習生というのは、人身売買と
同じですね。

世界が腐ってる。

一言で感想を言うなら
【絶望】です。

DJ KAZURU