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Paulo FG  
今、キューバのアーティストは国外の外国人相手か、
あくまでも国内のキューバ人向きか、
どの方向に向けて活動していくのかそれぞれ悩んでいる様だ。
特に、カンタンテ(ボーカリスト)が率いているバンドは、
サルサ・ティンバで攻めるのか、
ラテン・ポップ路線に中心を移すかで志向錯誤している。

メディコのマノリンは
オール・ラテン・ポップのアルバムをマイアミからリリース。
カルロス・マヌエルやダニー・ロザーダも
サルサ・タイプは数曲というCDをここのところ発表している。
実はこの傾向は、イサックのアルバム「LA FORMULA」
あたりから顕著になってきたもので3年は続いていることになる。
もう、こうなると定番ですね。

そして、パウロの3年ぶりの新作。
最高のティンバが数曲あれば、もう文句は言いません、
という気持で一気に聴いてみると、
全12曲の内前半は、ラテン・ポップ、バラ−ダ路線。
ソン・タイプの曲を挟んで後半はティンバという内容で
ファンとしてはホット一息。
ソウルフルなティンバ・トラックにパウロの切ない声がからむナンバーは
キューバ音楽の粋のひとつなのだから、まったく無かったら事件です。

どうも、ダンス・イベント用の選曲ばかりしていると
踊れるという基準が重視されてしまうが、
キューバでヒットしている曲は必ずしもサルサ、ティンバではなく、
最近は逆にそうでない場合が多いくらいだ。

カンタンテ達はバラ−ダやラテン・ポップで
ブエナ・ビスタ以降の世界の注目を受けようと躍起になっていて
誰が、リッキ−・マーティン、エンリケ・イグレシアスになれるか
競争しているようだが、どうなのだろう。

いずれにしても、パウロはずっとキューバのティンバ界のプリンスで
いてほしいし、その方が彼にあっている気がする。

(福田カズノブ/2003.11.11)


 


Adalberto Alvarez y su Son  
アダルベルト・アルバレスの新譜が久々に発売になった。
彼のバンドは、ソンの現代的解釈を進めた音楽性で1980年代初頭から活躍し、
後のキューバン・サルサに大きな影響を与えた。
また、その楽曲はキューバ以外の多くのバンドも取り上げ、
名作曲家としても知られている。
それだけにファンの期待も大きく、並みの出来では満足されない。

前々作の「Jugando con Candela(1999年)」は、
アラミス・ガリンドの強力なボーカルと
名手ホアキン・ベタンコートのアレンジが光ったことで
全盛期に劣らぬ傑作となった。
アダルベルト・アルバレスがまたトップ・シーンに
戻ったと印象付けるアルバムだったといえる。

ところが前作ではアラミスが独立していなくなり、
今回はホアキンのアレンジからも離れ、
バンド・メンバーも一新しての再スタートとなった。

今回のCDはソンへの回帰が色濃く、
そして疾走感あふれる楽曲ぞろい。
けして悪くはないのだが、中の上クラスといった感じである。

どうもアダルベルト・アルバレスの書く曲を
現在のバンド・メンバーでは表現しきれていない気がする。
まず、ボーカル。以前は、ティブロン、フェリックス・バロイ
という低音中心のカンタンテを入れていたのだが、
ここのところ、高音ボーカルばかりで軽すぎる。
また、バンドも中高音主体の音作りで疾走感はあるのだが、
重みが感じられない。
ファンとしては、もっと重量感のあるガツンとした演奏を期待したい。

今作は、タイトルにもあるように「カシーノで踊る為に」
がコンセプトの様である。
現在のキューバ音楽は、ティンバとブエナ・ビスタ系に大きく分かれ
いずれもカシーノ(キューバンでいうペア・ダンス)では
踊りにくくなっている。
その中間に位置するのは、マノリートとバンバン、プーピというところだが、
アダルベルトもカシーノで踊ってほしいということなのだろう。

◇     ◇     ◇     ◇

中ジャケットには、ルエダを踊るキューバ人の写真があるが、
どうも見覚えのある人達。と思ったら、
最近手に入ったルエダ・コンテストのビデオ(7月キューバのTVで放送)
で見た顔でした。

 


CONEXION SALSERA  
コネクション・サルセーラの新譜がENVIDIAレーベルから
発売になった。
1994年にCD「Me Desatina」でデビュー。
1997年にセカンド「Muy Caliente Para Ti」
を発表して以来なので、本当に久々である。

このバンドは、ベーシストNicolas Sirgadoがリーダーであるが、
セカンドまではDaniel Lozadaが在籍し曲を書いていた。
彼は、その後チャランガ・アバネーラに移籍し、
すぐに、自身のバンドTimba Cubanaを立上げる。

今回のCDにクレジットされているメンバーは
Nicolas以外は全員総入れ替え状態。
なのに、サウンドは前2作そのもので
以前からのファンは懐かしさを感じるだろう。

聴き所は5曲の「Malecon」。
どこかで聞いたことがあると思った人は耳がいい!
実は、最近発売になったハウステンボス・ライブ
のハイラ・モンピエの歌う7曲目のオリジナルバージョンである。
この曲を書いているDaryll Fernandezはよいメロディ・メーカーだ。

また、3曲目の「Ay,Ay,Ay」は1998年当時のキューバのヒット曲。
キューバ人は、皆で歌って遊べるような部分のある曲が
好きで、たまにヒットする。
僕は好きでない場合が多いのだが、
それがヒット曲の最大の要素なのだといえばどこの国でも同じである。
この曲のライターはOrlando Martinez。
彼の書く他の曲はティンバ色が強く、なかなかだ。

このCDは、実は、1998年に録音した3作目から半分ほど
ダブって収録されている。
一昔前のキューバンといった音作りなのは
そのころの曲が多いからなのだろう。
なかなかCD化できないのがキューバのバンド事情。
忘れたころのメジャー発売である。

今やソンの救世主となった感のあるENVIDIAレーベル。
キューバン・サルサも、ぜひ、どしどしリリースしてほしい。

* * * * *

Nicolas Sirgadoは、ラテン・ジャズのユニットとしても
最近CDをリリース。
キューバでは、ジャズ・クラブに出演しているらしい。
コネクシオンは、どうなっているんでしょう?

(福田カズノブ/2003.9.9)

 


マノリート・シモネーの音楽  
マノリート・イ・ス・トラブーコのライブを観て、
このバンドの魅力はどういうところから来ているのかを探ってみた。

まず、バンドの音の中心、
これはマノリート・シモネーのエレピであることは間違いない。
たまに、彼がピアノで曲出しのクラーベを弾くほどである。
そして、さらにそのサウンドの中心はギロになっていた。
マノリート・シモネーのグルーヴあるメロディは
ギロの8分の6拍子を核にしている。

そしてバックには、
トリッキーさの無いしっかりとしたベースとコンガ。
ドラムスは目立つことなくリズムを刻み、
たまにティンバ的なアレンジを加えるだけ。
マノリートが踊りやすいと感じるのは、
このリズム隊のオーソドックスさが影響している。

サウンドの魅力の1つには、
ホーンのアレンジが上げられるだろう。
ピアニストはホーンアレンジの得意な人が多いが
彼もその一人だ。
トラブーコはオーケストラのように、
弦楽器、ホーン、コロと三層のメロディラインを持ち、
弦だけだったり、弦とホーン、さらにコロが入ったりという展開で
盛り上げる。
弦楽器はリズム楽器として、トラブーコのサウンドに
さらに厚みをつけるという効果も上げている。

リード・ボーカルは2名。
重厚なエル・インディオに対し、
若手ティンバ・バンドにいても不思議ではない、
素晴らしい踊りも見せるリカルド。
この2人はコロに回った時も素晴らしい。
コロのパートが安定しているとリード・ボーカルが際立つので
コロの出来は意外と重要である。

曲作りでは、マノリート節の独断場を押し出したものや
クンビアなど様々なリズムを使ったものと並んで、
ヴォーカルのリカルドの作曲が光っていた。

日本のダンス・フリークにも人気の「メンティーラ」は
彼のペンによるもので、
バンバンとマノリートをたしたようなリズムは
都会的でありながら、キューバ色が強く、
マノリート・シモネーの曲と比較しても遜色はない。
そのうち、独立して自分のオルケスタを率いることの出来る才能である。

今回のライブで演奏されたCD未発表の新曲は1曲。
これもリカルドVOの曲だが、
グルーヴがじわじわとくる、いかにもキューバ的な魅力のあふれる曲で
次作も素晴らしい内容になることは間違いないようだ。

マノリンやダニ−・ロザーダ、カルロス・マヌエルなどの
ボーカリストはポップス路線で展開しようと志向錯誤中だが
マノリート・シモネーは、
ホセイート・ゴンザレス(ルンババーナ)
アダルベルト・アルバレスの正当な継承者として
キューバのコンフント・ソンを未来に運んでくれる才能だった。

今回のライブを見て、そんなことを感じ、とても嬉しい気持になった。

(福田カズノブ)

 


ハビエル・オルモの声  
実は、20代のころは超がつくほどの
ソウル・ファンでした。
特にヴォーカル・グループが好きで、
自分でも歌っていた時期がありました。
山下達郎のオン・ザ・ストリート・コーナーの
アナログが出た頃には、既にアカペラ・コーラスを始めていて、
僕らのアマチュア・グループのメンバー募集に、
今やトップ・グループとなったあのゴスペラーズのメンバーが
来た事もありました。
キューバ音楽を聴くようになってからも、
やっぱり歌ものが好きで
どうしてもカンタンテを注目してしまいます。

ハビエル・オルモ、
彼はエネヘのコンサートにゲストで来日したことがありますが
単独の,それもギター1本の伴奏で歌うことは初めてです。

ホテル・ヨーロッパ内のカフェ・ラウンジの会場は、
どこかキューバのレストランテのような趣で、
ハビエル・オルモの声だけを聴くにはふさわしい会場です。

彼の少し物悲しい声は胸をしめつける何かがあります。
今回のハウステンボスでは、
彼のライブに最も新鮮な感動を覚えました。
これから行かれる方は、
ぜったいに見逃してはいけないライブです。

(福田カズノブ)

 


ソンの重鎮の貴重なライブ  
昨年、オスカール・バルデス・グループの超絶サンテリア・ジャズを
行なった会場では今年はソンのライブが行われていた。

ロス・ファキーレスというバンドで、
ヨーロッパによく遠征しているそうだ。

ブエナ・ビスタと同様な年齢のバンドだが、
このバンドはその年齢を売りにしているわけではない。
キューバ音楽ファンですら、最大の魅力はその年齢、
といわんばかりにそこばかり持ち上げるが、
彼らは音楽でチャランガ・アバネーラに引けを取らない演奏を繰り広げた。

ギター、ボンゴ、サックス、
カンタンテ2人がそれぞれマラカスとクラーベ、ギロを持ちかえての演奏。
シンプル極まりないのに、グルーヴが凄い。

チャランガ・アバネーラのベースとピアノと同席して一緒に見たのだが、
彼らは『ブエナ・ビスタは大編成で、寄せ集めだが、
このファキーレスは小さな編成でオルケスタなみの演奏をしている。
ブエナ・ビスタよりキューバでは有名だし、僕らも尊敬している。』といっていた。

こういうバンドを、見ることが出来る幸運はそうないと感じた。

(福田カズノブ)

 


ハイラ・モンピエの魅力  
今週末からは、イスラでマノリートを見て、
ハウステンボスという人も多いでしょう。

以前からの傾向として、キューバのミュージシャンの来日は
こないときは1年近く音沙汰無しで、
来るときは立て続けということが多くて、
ファン泣かせなのですが、
今年もまさにそのとおりになりました。

◇    ◇    ◇    ◇ 

今回のハウステンボスはなんといっても、
チャランガ・アバネーラをバックにした
ハイラ・モンピエが話題の的。
昨年のクバニスモ、ローロ・マルチネスとの競演も
ソン・テイストでとても良かったですが、
今年は待望のティンバです。

ハイラの魅力は、なんといっても、その声とダンスですね。

バックのコロを制するかのような、意志のはっきりした声質。
そして、チャランガのフロントと並んで踊っても、
引けを取るどころか逆に引っ張っていくような、
ルンバ感の強いダンス。
バックのサウンドをぐるりと一回転させる
モントゥーノへの誘いなどは、ホントに光るものがあります。

チャランガ・アバネーラは、
その個性をダビ・カルサードに返して、
完全にハイラ・モンピエのバック・バンドとなっていました。

もちろん、それを可能にしているのは、
輪郭のはっきりした抜群の演奏力と
これからの活躍が期待されるOsmanyの
光るアレンジなのだということも
付け加えなくてはなりません。

DJ KAZURUのインタビュー時の話では、
ハイラ・モンピエのバンドは既にキューバ国内にあるそうで、
彼女によると2枚のCD企画が予定されているとの事。

ソロになってからは、標準以上の作品を出してはいますが、
やっぱり最高なのは、バンボレオ、アスーカル・ネグラ時代。

それは、彼女の個性と楽曲、演奏が同じエネルギーで
ぶつかっていないからでしょう。

9月の東京公演では、
どんなハイラ・モンピエを見せてくれるのか楽しみです。

(福田カズノブ 2003.8.21)

 


ハウステンボスはキューバ?  
チャランガ・アバネーラとハイラ・モンピエが
長崎ハウステンボスで2か月あまりのロング・ラン公演。
5年前では考えられないですね。

キューバ国内でもハイラとチャランガの競演は
たしか1回あっただけ。
当地へ旅行をしてもなかなか大物アーティストがいるとは
限らない昨今、
ソンの重鎮バンドやハビエル・オルモの単独ライブも
いっぺんに楽しめるとあっては、
キューバン・ファンとしては見逃せない。

もう体験した人、これからという人、思案中の人、
そして行けなかった皆さんに、
ティンクバ的なライブ・レポートを報告します。

◇    ◇    ◇    ◇ 

まだ日没前の18時すぎから1時間あまりチャランガのライブ。
昨年と同じメンバーで、演奏も、ボーカルも
さらに安定感が増している。
チャランガに関しては、
東京公演とハウステンボスでは演奏曲が異なる模様で
比較してみるのもいい。
(7月末に急遽ライブ録音したCDが現地で発売中)

見所はフロント1人1人のボーカル。よく聴くと声質が違い、
CDで確認すると誰が歌っているのかが判ってより楽しめる。
男性4人のタイミングの揃ったダンスは最高ですね。

リズム陣、これは現在ティンバ系の中でも最強です。
特にベースとティンバレス。
2人でチャランガの音の中心を全て出しています。
チャランガはドラムスがないので、実は音はコンパクト。
全盛期のバンボレオから移籍のベース、
Randolph Chaconはものすごいです。
2人を見ているとそれだけでぶっとびますね。

ホーン・メタル・セクションは、
意外と吹きっぱなしでないのがチャランガの特徴。
出世頭のOsmanyが指示を出しているホーンのタイミングだけを
注視してみるのも興味深い。

チャランガのアーティスト研究は別の機会でということで、
次回は、チャランガ・アバネーラをバックにしたハイラの報告。

(福田カズノブ)

 


観葉音楽  

ティンクーバをスタートしたとき、
キューバのバンドのライブを観ている時に起きる精神状態を
日本でそのまま再現したいというイメージがありました。

ぐんぐん昇っていく高揚感と疾走感・・・・・

メロディとリズムがねじれながら体の中をつき抜ける感覚・・・・・

バンドの発する強制力、
そして快感を肯定していく時間と空間・・・・・


僕にとってみれば現在のティンクーバは、
キューバのティンバ・バンドが毎月来日しているのに近い感覚になっています。

このコラムでは、いろいろな角度から、ティンクーバ・オーガナイザーの視点で
ティンバを語っていきたいと思います。


(福田カズノブ)

 


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