KAZU FUKUDA

KAZU FUKUDA
観葉音楽
Vol.8
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TIM★CUBA直前
2005年9月22日(木)

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Mayito Rivera 「 Llego La Hora 」
2005年9月18日(日)

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アイドルはどの国でも必要
2005年9月16日(金)

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TimCuba☆Gallery
2005年9月14日(水)

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Adalberto Alvarez & Aramis Galindo
2005年9月6日(火)

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レゲトンとティンバ、そのストリート性に関して
2005年9月2日(金)

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Los Van Van 論 〜その5 番外編〜
2005年8月31日(水)

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Los Van Van 論 〜その4 ライブ編〜
2005年8月30日(火)

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Los Van Van 論 〜その3 楽曲編〜
2005年8月29日(月)

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Los Van Van 論 〜その2 オルケスタ編〜
2005年8月27日(土)

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Los Van Van 論 〜その1 フロント編〜
2005年8月25日(木)

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Pancho Amat y su Cabildo del Son
2005年8月14日(日)

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Los Van Van 来日迫る!
2005年8月7日(日)

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TIMBAスタイル
2005年7月21日(木)

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ORQUESTA DE LA LUZ
2005年7月16日(土)

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「中南米マガジンVOL.16」
2005年7月5日(火)

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観葉音楽 By KAZU FUKUDA

観葉音楽 By KAZU FUKUDA

▲INDEX  
 TIM★CUBA直前


ある常連の友人から、23日と24日のイベントはどう違うのか
という質問がきました。

お知らせの通り選曲はかぶりません。
というのも、メインDJが入れ替わるからです。
ティンクーバのDJ2人は、キューバン・テイストであっても
実は全く異なる志向をもっていて、
近年その幅は広がっている傾向にあります。

DJ KAZURUに至っては、もうオンリー・ワンの世界で、
僕ですら音源がわからない曲がたまにあります。
原曲をきくと、
この曲だったのかと驚くほど絶妙なRE-MIXになっていることもあります。

キューバの源流志向の強い選曲と
キューバの未来志向の強い選曲。
ここにはかなりの差がでているわけです。


ところが、他のイベントに行くと同じDJイベントでも
キューバンでもかなり世界が違うのです。
それぞれのイベントの楽しみ方はいろいろあると思いますが、
ティンクーバとはかなり違いますね。

つまり、2人のDJがメインを入れ換えても
TIM★CUBAにもっとも近いイベントは
TIM☆CUBAなのだということになるわけです。
友人の指摘はそういう意味で的を射ていたのですね。


今回、僕のアプローチはソンからティンバまで。
ノンストップで4〜5時間流れますが。
実験的なトラックはSonの30分セット。
ティエンポで踊るか、コントラで踊るか、
それとも飲みながら聴くか。
皆さんにどう楽しんでもらえるかとても楽しみです。


2日目のDJ KAZURUのMIXトラックは超強力なので、
バリバリに踊れます。

前夜祭は葛西でキューバンに浸り、
土曜は六本木でファンキーに。
常連の方、未体験の方、ぜひお楽しみに!


2005/09/22 
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 Mayito Rivera 「 Llego La Hora 」


Mayito Rivera 待望のソロ作品が発売になりました。





Los Van Van の来日直後という話題性もあり、
Mayito が歌いまくるという前評判もあったので
会心作かと思っていたのですが、
次作への思いを込めてあえて言うと、
少し期待はずれと言わなければならない出来でした。

バック・バンドは、
Los Van Van の Samuel Formell と Boris Luna 、
ピアノにはイサック・バンドの若手のトップ Rolando Luna 。
そして、メタル・セクションには、Alexandro Abreu と Amanry Perez 。
超強力な布陣です。

各曲を聴いてみると、演奏のキレは凄まじいほどで、文句のつけようがありません。
ボーカルの Mayito も歌いまくっていて、こちらも実力通り。
これだけのミュージシャンが揃っていれば
黙っていても素晴らしい作品ならなければいけないところですが、
音楽はそれだけでは良いものが出来ないという典型例になってしまいました。

デスカルガとしては良いのかもしれませんが、全体に曲が今ひとつ。
各楽曲の聴き所はあるにはあるのですが、
曲全体として魅力的なメロディに乏しく散漫なのです。

実際、このメンバーでのライブを目の当たりにしたら絶賛することでしょう。
キューバ音楽は生で聴くとたいていの場合驚くほどの迫力があるからです。
映画にもなった Musica Cubana ライブも、
来日コンサートとしては屈指の素晴らしさでしたが、
CD は選曲も含めなぜか今ひとつでした。
逆に CD は良くても、ライブはいただけないという逆の場合もありますが。

今回の Mayito のソロはいろいろな意味で考えさせられました。
自分で作曲とディレクションをしたのがまずかったのでしょう。
彼の良いところは、才能ある作曲家とディレクションが出来る有能な人が付かないと生きてきません。
そういう意味では、Los Van Van に在籍してこその Mayito なのだと感じます。

とはいっても、これだけのメンバー、演奏を楽しむだけでも購入する価値は十分にあります。


2005/09/18 
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 アイドルはどの国でも必要


今年1月にCDが出たEl Clan。
3月には、Los Angeles De La Habana 。



そして、正式リリースを待つばかりの El Boni y Kelly 。
どのバンドも若手中心、イケメンを売り物にしたアイドル・バンドです。

キューバでも、若い女性は大勢いるわけですから、
外タレが殆ど存在していない現状では、国内のイケメン・バンドを追いかけるのは必然。
日本でも Charanga Habanera や Los Van Van の Mayito なんかは
コンサートではきゃーきゃー言われていた位だから、
パワーあるクバーナならば、どのくらいの騒ぎ方か想像を超えますね。

10 年前には、Paulito や Charanga Habanera がアイドルでしたが、
彼らは音楽的なレベルも高く、一時代を築くまでになりました。
現在のアイドル・バンドはどうでしょうか。

El Clan、Los Angeles De La Habana もデビュー作を聴く限りは、
若さ爆発で好感はもてますが、音楽的に惹かれる程のものはなく、
これからという感じです。

イケメンが歌い踊るステージングと観衆の熱狂を体験した人は、
キューバでうけていて凄いバンドだという印象を持つと思われます。
そのバンドが若い女性の人気先行なだけとしても、それでいいのだと思います。
ポピュラー音楽はルックスを含めたかっこよさが必要ですから。

そのあたりでは、北米の音楽界は層も厚く、イケメンの身のこなしもこなれています。
対するキューバのアイドルは、素朴な兄ちゃんといった感じで可愛いかぎり。

この中から素晴らしい作品を残すバンドが出ることを期待してやみませんが、
イケメンは、どの時代でもどの国でも、
女性の人気の的として需要があるので、
まあそれはそれで普遍的な存在といえます。



2005/09/16 
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 TimCuba☆Gallery


Gallery がリニューアルしました!

本当に大勢の皆さんに来ていただいて感謝しています。


ティンクーバは、HP でもイベントでも、
我々オーガナイザーが納得できる内容のみで構成しています。
その内容が濃いので、一時は上級者のみ対象のような感じもあったのですが、
最近はキューバ音楽やダンスの情報も行き届き、皆さんの感性もすばらしいので、より多くの広い範囲の方に楽しんでいただいています。

ずっとさかのぼって、
2000 年6月24 日がイベントのスタートですが、
実は、第1回の名称は「復活!キューバン・サルサいっぱいかけるよスペシャル」だったのです。
この名称、DJ KAZURU が CU.4 というユニットで、吉祥寺ハバナで行っていたイベント名で、キューバン DJ ものでは東京では初というもの。

まさに草分け的なイベントで、濃い人達がぞくぞくと集まり爆発的な人気だったのですが、
吉祥寺ハバナが突如閉店してしまい、惜しまれながらイベント終了になります。
その時の人気が残っていて、6月24 日の第1回、六本木芋洗い坂の小さなクラブは、キャパをはるかに超える人数で大盛況でした。

第2回は、DJ KAZURU と福田カズノブのイベントいうことでオリジナル名称を考案。
僕が将来バンドを組んだ時のために取っておいた名称「 TIMCUBA 」を2人のイベント名に提供。
DJ KAZURU が☆=星を付けてキューバン100% DJ イベント「 TIM★CUBA 」がスタートとなったわけです。

この☆のアイデアは、当時「120%サルサ誌」のイベント欄では例がなく、
その後、続々とイベント名に使用されるようになって行きます。
TIM★CUBA名の由来は、TIM-BA・CU-BA-NA の BA を共有化させた造語で、
中央の星はキューバの国旗を意味しています。
友人からはティンクーというニックネームもいただきました。

Gallery を見ていると感慨深いものがありますが、
ティンクーバのコンセプトはイベント・スタートから一貫して変わらず、メイン DJ の KAZURU の DJ プレイはご存知の通り、未だ進化し続けています。


この HP で、ティンクーバを知ったあなた、
イベントの内容は本当に来て見て、聴いてみなければわかりません。
DJ KAZURU のリミックス DJ プレイは言葉では表現しきれませんね。
そういう意味では HP よりイベントの方がインパクトは強力です。


僕の方はサルサ DJ というより選曲家。いまやコラムや Disc Review が中心といえますが、僕を含め、殆どのサルサ DJ は、本来の DJ とはいえるテクニックを持っていませんのでDJしてますなんて、恥ずかしくて言える立場にはありません。まあ、便宜的に言うならば、「サルサ」とあえてつけた方がよいでしょう。


23日は葛西 BAR HABANA で選曲家 福田カズノブ中心のイベント。

24日は六本木カルナバルで、DJ KAZURU のファンキーなトラックが炸裂します。

皆さん、今月末をお楽しみに!




2005/09/14 
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 Adalberto Alvarez & Aramis Galindo


アダルベルト・アルバレスとアラミス・ガリンドの新譜が
ほぼ揃って発売になりました。
アダルベルトは2年ぶりですが、
アラミス・ガリンドはなんと4年振りのリリースです。



アダルベルト・アルバレスは
前作「 Para Bailar Casino 」
前々作「 El Son de Adalberto Suena Cubano 」
の流れの中にありながら、楽曲・アレンジに
1980 年代の黄金期を彷彿させる部分が見え隠れしていました。

「 Y Que Tu Quieres Que te Den 」は
過去の作品のリアレンジ版。
またチャポティン&クニーの代表曲を取り上げたりと、
コンフント・ソンへ回帰する気配をみせています。

1曲目の「 Mi Linda Habanera 」は前作の延長線上
といえる明るくシンプルなメロディでヒットしそうです。
全体としてアベレージ以上の作品ではありますが、
1980 年代の全盛期や1999 年の傑作からすると
まだまだ物足りません。



一方、アラミス・ガリンドは
ボーカルが突き抜けているところが最大の魅力。
アルバム1枚をボーカル力だけで聴かせる力があります。
バンドも勢いがあってなかなかしっかりした演奏。
こちらの作品もアベレージ以上の出来でした。

このアダルベルト・アルバレスとアラミス・ガリンドは
1999 年に「 Jugando con Candela 」という傑作を残していますが、
分かれてからはこの作品を超えるものを作っていないですね。

現在のアダルベルトのオルケスタは歌が軽すぎていただけません。
彼の好みといってしまえばそれまでですが、
ここのところ、ボーカルが弱すぎてだめですね。
バンドもボトムが軽くていまひとつです。

ところが、
曲は明らかにアラミス・ガリンドよりもヒット性が高く、
全体的にレベルが上なのです。

アラミス・ガリンドのバンドで
アダルベルトの曲を演奏すれば
素晴らしい作品になることは間違いありませんが、
とても残念な状態です。


2005/09/06 
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 レゲトンとティンバ、そのストリート性に関して


プエルトリコで誕生したレゲトンは、北米を覆いつくし、
世界に飛び火して大ブームの様相ですね。

日本でも、CD輸入量販店にコーナーが出現したり、
国内盤がリリースされたりしています。
また、イベントやダンス・レッスンも次々に登場しているようで、
まさにブームに乗りおくれるなという状態。

キューバ国内でも数年前から街ではレゲトンばかりが
聞こえてくるという旅行者の声が多かったのですが、
昨今では、主張の強いキューバ人らしく、
プエルトリコ発のレゲトンを自分達流にアレンジし、
クバトンと呼んでいるバンドが続々と登場しているようです。

レゲトンは、HIPHOPやレゲエのスペイン語版的なところが
ありますが、そもそもHIPHOP自体、
ニューヨリカンの存在が大きく作用して誕生したものなので、
HIPHOPとレゲトンはしばらくぶりに会った「いとこ同士」の
ような関係といえます。

キューバ、ハバナの街は、
自分達もブームに乗っかって金儲けできるかもとか、
俺のレゲトンが最高にかっこいいぜ
と突っ張っている若者だらけなのは想像がつきますね。

クバトンのコンピ「CUBATON REGGAETON A LO CUBANO」聴くと、
だんだんと音楽性やキューバらしさが出てきたようですが、
これらの音の魅力は、
現在進行形のハバナの混沌とした音そのものなのだと思います。
まさに、ストリートの魅力です。

1980年代のバンド・ソンは、当時まさに街の音でしたが、
1990年代になってキューバン・サルサに
その座を明けわたします。
その後、ティンバと呼ぶようになってからも、
ハバナのストリートの音として2001年位まで
人気が続いていくのですが、2005年現在、ハバナの
ストリートの音はクバトンであることは間違いありません。

ここ2〜3年はティンバとクバトンが
せめぎあっていた時期といえますが、
今年に入って明らかな傾向が生まれてきました。

ティンバ系のアーティストは、この間、
POPSやレゲトンの要素をいかに自分達の音に取り入れて
若者の指示を得るかに力を注いでいたのですが、
ここまで、クバトンの勢力が大きくなってくると、
ティンバ系のアーティストはストリート性をクバトンに譲って
自分達の本当にやりたい音楽をやっていこうという
動きがでてきました。

イサックのアルバムしかり、
最近リリースになったフィデル・モラレスもそうですが、
流行に左右されない、じっくり味わえる
キューバン・サルサ、ティンバ・テイストの作品は
今までにはなかった傾向です。

若者の流行を追うことをやめたとたんに、
キューバの実力あるミュージシャンは
素晴らしい作品を発表し始めた訳です。

そういう関係性を考えれば、レゲトンをクバトンと名乗って
キューバでブームになっていることは、
ティンバにとって悪い流れではなく、
迷いが吹っ切れてよかったとも言えるわけです。

音楽の流行とストリート性は、
ある部分イコールの部分があるわけですが、
音楽の進化はストリートだけではないので、
さらにソンからティンバまでの音がどう進化していくのかを
見極めたいと思っています。


2005/09/02 
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 Los Van Van 論 〜その5 番外編〜


あまり話題になっていませんが、
ピアノのRoberto Carlos Rodriguez ゛Cucurucho ゛を
ひそかに注目しています。
彼は、Ven Ven Ven という最近のヒット曲を書いていますが、
今回のアルバムの中でも、キラリと光るナンバーです。

キャリアは、
チャランガ・アバネーラ
チャランガ・フォレベル
イサック・デルガード・グループ
パウロF.G.
とトップ・ティンバ・バンドを渡り歩いていて申し分ない実力者。

ピアノのプレイは、どうしてもプーピのトラのような
位置づけになってしまっていますが、
作曲ではかなり期待できる存在。
ところがフォルメルは、彼より息子サムエルの曲を
押しているようで、
東京公演で演奏したCucuruchoの曲は
大阪では取り上げられませんでした。

Ven Ven Ven を生演奏で聴きたかったのですが、
今後も実現は難しい感じです。



2005/08/31 
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 Los Van Van 論 〜その4 ライブ編〜



最後に今回のLos Van Van の来日公演で感じたことを幾つか。

初日の新木場スタジオ・コーストでは、冷静に観察しようと、
ステージ全体を見渡せるコンソール近くに陣取ったのですが、
ライブがスタートしてしばらくするとバンバンのグルーヴが
身体の中にすっかり入り込んできて
思考停止になってしまいました。
ダンスやライティングも特に凝っていないのですが
音圧にやられました。

会場の音質も程よく、初日ということもあってか
丁寧でオフィシャルな演奏でしたね。
シントゥーラ大会をはじめ現地ライブのような
「はじけ感」が好み人には物足りなかったところも
あったかもしれませんが、
そのしっかりとした演奏は
Los Van Van が世界のトップ・ポピュラー・バンドなのだ
ということを証明するかのような風格を感じさせてくれました。

大阪公演では東京とは打って変わってはじけまくりで、
会場と一体となって盛り上がるバンバンを
最前列近くで楽しめました。
マジートがバンバンの華として全開、
素晴らしいソネーロぶりでした。

バンバンのライブを観て思ったのは、
このバンドがもう少し早く来日していたら
日本のキューバ音楽観は変わっていただろうということ。

キューバ来日ラッシュはNG La Bandaの
毎年の連続公演に始まりますが、
村上龍氏のコメントにもうながされて、
キューバのバンドは超絶ミュージシャンばかりでそこが見所、
という方向性ができてしまったのではと感じてしまいます。

バンバンのメンバーのテクニックは勿論すざまじいのですが、
そこを強調した部分は殆どありません。
圧倒的なバンド・サウンドと名ボーカルを堪能するばかりで、
一つ一つの楽器はその一部というか集合体として聴こえるので
超絶テクニック云々は問題外になります。

離合集散を繰り返すティンバ・バンドは、
バンド・グルーヴが出来上がりにくいので
個々のミュージシャンのテクニック志向とアレンジで
バンド・グルーヴを補ってきたように感じてしまいます。

今回のLos Van Van のライブはそういう意味で
過去のコンサートの中でもバンド・グルーヴを感じられた
ベスト・ライブの1つといえるでしょう。

個人的には、
オルケスタ・レベ@六本木、
ロス・ナランホス@青山
に匹敵する最高なライブでした。


2005/08/30 
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 Los Van Van 論 〜その3 楽曲編〜


Los Van Van が最も革新的だったのはデビューから1970年代の後期ぐらいまで。


ベースのフォルメルとピアノのプーピ、パーカッションのチャンギートこの3人のアンサンブルは現代音楽といえる程、幾何学的でクールな前衛音楽でした。
NGのホセ・ルイス・コルテスが在籍していたのはこのころ。


その後、フォルメルはバンドの人気を維持していくために分かりやすいメロディを全面に出していきます。
1980 年代には、トロンボーン・セクションを導入。
ソンの復興を尻目に、ソンゴを頑なに守って決してソンを演奏しようとしませんでした。

ロックとチャングイのねじれた融合ともいえるソンゴは独特なものでしたが、キューバ音楽のもつグルーヴは強く大衆には大うけ、ペドロ・カルボの人気が爆発し、キューバの代表ともいえる存在になります。


1990 年代に入って大きなメンバー・チェンジがあり、ドラティンはチャンギートからサムエル・フォルメルへ。
ボーカルにマジートが加入し、作曲とボーカル担当のアンヘル・ボンネはソロへ、そしてロベルトンもパチート・アロンソから加入します。

サウンドはティンバを取り入れ、シンセを多様した音作りになり、よりダンサブルなサウンドへ展開。プーピの作曲も増えていきます。


2000 年に入るとバンドの核ともいえるペドロ・カルボとプーピが脱退。かわりに、NGからジェニー、レベからレレが加入します。
ペドロ・カルボとプーピが抜けたことでバンバンはソンゴ・カラーからやや離れ、ティンバやサルサ、ポップ色を強めていきます。

新メンバーによる初のスタジオ盤「Chapeando」は、今までのバンバンのアルバムの中で一番聴きやすいという人が意外にも多いのは、プーピの創り出す過剰なグルーヴが薄まり、シンプルになったこととクラーベ感が強くなり、ペア・ダンスが踊りやすくなったためでしょう。


今回のジャパン・ツアーで演奏された曲は、数曲を除いて全てフォルメルの楽曲。
プーピの曲は皆無なので、今後バンバンのライブでは演奏されることはないのでしょう。

Los Van Van は名作曲者ファン・フォルメルが健在ならば不滅ですが、その後は作曲面でバンバンと言えるかどうかはやや疑問です。
今のうちに新作を連発し、現在のバンドのレパートリーを増やしてはと思います。


2005/08/29 
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 Los Van Van 論 〜その2 オルケスタ編〜

Los Van Vanのサウンドの秘密を
そのオルケスタ編成から考えてみました。

まず目に付くのはずらりと並んだトロンボーン3人と
バイオリンとフルートの3人。
トロンバンガ&チャランガのダブル編成ともいえる陣容です。
あるときはグルーヴをつくり、あるときはサビに厚みを加えていますが、けして前に出てくる存在ではありません。
トロンボーン奏者のHugoはオルガンも演奏し、ソロ・ミュージシャンとして他の作品でもたまに見かける実力者です。

そして、ドラティン、コンガ、ギロのパーカッション隊。
ドラム・ティンバレスのサムエル・フォルメルは、今やキューバ国内でもその実力を認められた存在ですが、若くして天才チャンギートの後釜を務め、1990年代にLos Van Vanにティンバのテイストを加えた功績者でしょう。
また、バンバンにはギロが単独でいるのも特徴。マノリートにもギロ奏者はいますが、ギロはキューバ音楽では重要なパートですね。

ベース、ピアノ、シンセは、バンバン・サウンドの屋台骨。
ベースのフォルメルは音数をひけらかさず、シンプルでグルーヴィなフレーズに徹した奏法です。
ピアノも、強烈なドライブ感のある奏法でオンリーワンな存在なプーピからCucuruchoになって目立つことなく安定感を優先させたサウンドになっています。
シンセのボリス・ルナは、実は名うてのミュージシャンで、他の作品にも顔を出しています。イントロの荘厳な響きや曲の後半のモントゥーノでたまに登場する不思議なメロディはボリス・ルナの仕業。

そして、ボーカルの4人は、リードを取らないときはコロに回りますが、リード・ボーカルと同じ位重要なコロに、トップ・ボーカリストがずらりと揃うバンバンは本当に豊かなサウンドが可能です。
この4人、声質、音域がはっきりと違うのでユニゾンで歌うと独特な厚みが生まれます。

トロンボーン、バイオリン、パーカッション、ベース&ピアノ、コロ、この5層があるときは重なり、あるときは追いかけバンバン・サウンドは構成されているわけです。

あくまでもバンド・サウンドで勝負しているところが、他のキューバ・バンドの追従を許さないLos Van Vanの音楽的な秘密といえるでしょう。



2005/08/27 
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 Los Van Van 論 〜その1 フロント編〜

現在のLos Van Vanがキューバ音楽界で最強と思える部分の1つに、
フロント陣のレベルの高さが挙げられると思います。

4人のボーカリストはそれぞれに個性的で実力者ぞろい。

その熱唱ぶりはカリスマ的ですらあるバンバンの華、マジート。
ペドロ・カルボ脱退後、
重厚なボーカルでバンバンらしさを引っ張るロベルトン。
抜群の音程感が定評のバンバン初の女性ボーカリスト、ジェニー。
そして、パチート・アロンソ、レベと重厚なオルケスタを渡り歩き
現在バンバンのコロを担うレレ。

オルケスタをすぐに持って独立できるボーカリストが
マジート、ロベルトン、ジェニーと3人も在籍しているバンドは、
現在、バンバンだけでしょう。

反面、
マジートは、リード・ボーカリストとして自分の曲を数多く歌えない
フラストレーションをライブ後のアフター・パーティなどで発散しているようですし、
ジェニーは、今回のライブではリード・ボーカルが1曲だけ。
バンバンのボーカリストという勲章はありますが、
キューバ音楽界屈指のボーカリストが多くの曲を歌えないのは
ある種の損失かもしれません。

それほど贅沢なフロント陣を擁するLos Van Van。
そのライブが悪いはずはありませんね。

別の視点からみてみると、
バンバンの歴代ボーカリストは、意外なことに
他のバンドで有名になったボーカルではないことがほとんど。
ジェニーは女性なのでやや例外ですが、
マジートですらほぼ無名でした。

ファン・フォルメルは、ボーカリストはあくまでもバンバン・サウンドの一部
と考えているのでしょう。



2005/08/25 
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 Pancho Amat y su Cabildo del Son

シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルのガーデンバーベキューで演奏しているパンチョ・アマートを聴きに行きました。

キューバのレストランではよくソンのバンドが入っていますが、日本で楽しめる機会はめったにありません。
しかも、最高のトレス奏者パンチョ・アマート。
大音量でどっと盛り上がることはありませんが、素晴らしい音楽を、素敵なロケーションでゆったりと堪能でき、まさに贅沢な時間を味わうことができます。
もちろんホテルのバーベキューですから味もばっちり。



ここで、少しサウンドの紹介を。

パンチョ・アマートの演奏するトレスはソンの発展に不可欠な楽器で、キューバのバンドには必ず入っていたのですが、セプテートからコンフントへと編成が大きくなり、近年ジャズやサルサを演奏するようになるとその役割はピアノへと引き継がれていき、今はその生音を聴く機会も少なくなってきています。

トレスの名奏者といえるのは、キューバ音楽の至宝Arsenio Rodriguez、チャポティーン楽団のNino Rivera、元レベのPapi Oviedo、トレス奏者のジミヘン元ホーべネスのCoto、そしてこのPancho Amatでしょう。
パンチョ・アマートは、グルーポ・マングアレを経て、全盛期のアダルベルト・イ・ス・ソンに加入。そこでディレクトールを務めた後、自身のバンドを結成して今日まで3枚の作品を発表しています。来日は、1992年の「ノーチェ・トロピカル」以来、2度目。

バンドのメンバーは6人の小編成ですが、トランペットのFrancisco Padronはパウロ・イ・ス・エリーテ、ライソンを経て、数々のセッションにも参加している名奏者。
リード・ボーカルもなかなか良い声で聴かせます。
グアヒーラ・ソンから、アルセニオ・スタイルのソン、ボレロ、そしてアダルベルト・スタイルのバイラブレなソンを2ステージに渡って演奏。
個人的には、Nino Riveraの名曲「El Jamaiquino」を聴くことが出来たのが感動でした。

豊かなソンのしらべは、本当に伝承するに値する音楽といえます。
キューバが生み出した宝物「Son」、これをしっかりと次の世代に引き継いでいこうという意思をパンチョ・アマートに感じました。

キューバ音楽ファンはもとより、全ラテン音楽ファン、サルサ・ダンス・ファンにも足を運んでもらいたいライブです。



8月26日には、ホテル内でスペシャル・コンサートが行われるようですが、野外のバーベキューでゆったりと楽しみたい方は、18時開場と同時に中に入り、会場奥のステージ前のテーブルを確保し、食事をしてから18:30から45分、20:00から45分の2ステージを観ることをお勧めします。
予約をしておくとさらに確実です。


2005/08/14 
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 Los Van Van 来日迫る!

いよいよですねえ。Los Van Vanの来日ライブ。

ちょうど、夏休みの人も多いと思いますが、
ライブを観た翌日は社会復帰できないと思うので、
仕事がある人は要注意です。
とにかく強烈です。
チャランガ・アバネーラ、マノリートの比ではありません。
翌日は頭の中にVanVanのメロディがぐるんぐるん回ったままでしょう。

音楽鑑賞という感じではないですね、音を浴びる感じです。
ライブの前は充分に腹ごしらえをして、水分を取っておきましょう。ふらふらになること必至です。

また、キューバ音楽が初めてという人を同行する場合、
注意が必要と思います。
呆然と立ち尽くして、何がなんだかわからなくなる人。
(13年前の私です)
ステップも何もわからずに夢中で踊り続ける人。
頭痛くなってきたと立ち去る人。

そして、多くの人がキューバ産の熱病にうなされます。
当然、アフターケアが必要になります。

CD買って、ステップを友人に習って
バンボレオの来日ライブに行って、ティン★クーバにくれば
アフターケアにはなりますが、
症状はかえって深刻化して手がつけられなくなります。

LAとかニューヨーク・スタイルを習っていた人が
いきなりキューバン・スタイルに転向してくるかもしれません。
インストラクターの皆さんは受け入れ態勢が必要ですね。

どんな曲演奏するのだろうと思っている人。
ずばり「Chapeando」と「En el Malecon de la Habana」が
直前対策盤です。



そして8月8日月曜のDisc Reviewで取り上げる
「Live at Miami Arena」を予習すればばっちりでしょう。


2005/08/07 
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 TIMBAスタイル


今年1月デビュー、4月にセカンドを発表しシーンに登場したのが
マイアミ在住亡命キューバ人バンドTIEMPO LIBRE。





元NG LA BANDAのボーカリストEL KIDを擁し、ニューヨークなどでもライブを行っています。サウンドは疾走感あふれる1990年代のティンバ・スタイル。
彼らが亡命する前にハバナで流行っていたスタイルをそのまま再現しているようです。在米ローカル・バンドが演奏するティンバがUSAで受入れられるかどうか、その鍵を握る存在といえます。



一方、プエルトリコから2003年の作品で登場したのがLA PVC。
プエルトリコでは珍しい、というかここまでティンバのスタイルで演奏するバンドは初めてなのではないかという内容。クールなサウンドで、クラブよりな感触がキューバのティンバにはない魅力を放っています。どことなく日本のティンバ・バンドGRUPO CHEVEREを彷彿させるものがあります。



GRUPO CHEVEREは1990年初頭からキューバのスタイルを模倣する演奏を行い、その後自らオリジナルのアレンジを追及するようになって現在も活動中。キューバ外のバンドとしては世界でも稀に見るオリジナリティあふれる楽曲を制作しています。

これらのバンドの音から、ぼんやりと感じていたことがはっきりしてきました。

我々が認識しているティンバは、
ティンバというスタイルの演奏方法を用いて、
キューバ人が、
キューバ・ハバナの流行や国内ミュージシャンの影響の中で制作した楽曲を指す場合、
最も濃い内容になります。

TIEMPO LIBREの場合、ティンバというスタイルでキューバ人が演奏しているので2つの要素はクリアしていますが、ハバナの進行形の音ではありません。
LA PVCはさらにキューバ人ではないので、さらに構成要素は少なくなっています。

ところが現在、ハバナのストリートではティンバよりもレゲトンやHIPHOP、POPSが大流行となっています。
そういった状況の中、海外で、キューバ人でないミュージシャンがスタイルとしてのティンバを演奏する時代が来てしまったわけです。
海外亡命組のキューバ人は、USA向けのサルサやラテンPOPを演奏してもオリジナリティが生かされず、泣かず飛ばずの状態になるので、勢い得意とするティンバを演奏することになったのでしょう。

GRUPO CHEVEREとLA PVC、この2つのバンドはいみじくも、キューバ人ではない、ハバナ在住ではないという共通する要素をもっているわけですが、楽曲の質感が驚くほど似ています。

では、キューバ発のティンバにあって、この2つのバンドにないものは何か。
それは、キューバ音楽しか持っていない要素、
アフロ・キューバンなのではないでしょうか。


2005/07/21 
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 ORQUESTA DE LA LUZ

オルケスタ・デ・ラ・ルスの新譜「ARCO IRIS」を聴きました。
この作品、日本人のみのラテンとしては、かなりの高得点でしたので、コラムでとりあげたいと思います。全13曲中、気にかかった曲のみのコメントです。



「2.ARCO IRIS」はタイトル・ソング。
新生デ・ラ・ルスから加入の扇谷ケント作曲です。彼はJ-POPのライターとして活躍できる力を持っていますね。リズムはサルサではありませんが、ホーンとパーカッションが曲にぴったり。日本語歌詞はGENTA。

「3.地上に砕け散った恋は」
素晴らしいメロディです。作曲は山崎まさよし。さすがです。サルサ界にこういうメロディ・メーカーが1人いたら、流れがかわっていたでしょう。NORAのボーカルも溶け込んでデ・ラ・ルスの代表曲になりそうです。

「4.Saving All My Love For You」
ホイットニー・ヒューストンで有名な曲のカバー。NORAはR&B、ソウルが好きだということが伝わる歌唱です。後半のピアノ、ホーンのアレンジは、コンテンポラリー・キューバンそのもので、踊れます。ISSACの最新作を彷彿させるセンス、まさにアレンジャー相川等の会心作ですね。必聴です。

「6.永遠に」
ゴスペラーズのヒット曲のサルサ・バージョン。歌詞は日本語とスペイン語です。良い曲ですね、これも充分踊れます。後半のアレンジも最高です。

「8.君を見てた」
ボーカルのJIN作。久保田調の日本語ファンクです。アレンジがチェベレを彷彿させます。

「11. Para Que Gozen Rumberos」
NORA作詞作曲。以前のデ・ラ・ルスの曲調全開です。ソノーラ系のNYサウンドですね。今のNYダンス派には確実に受けると思われます。NORAの会心作でしょう。

「13. Carnaval」
英語歌詞のサルサ。後半の展開、グルーヴは素晴らしいナンバーです。

全13曲中、7曲をピックアップしました。踊れるのは4,6,11,13の4曲。アルバムの前半は聴き応えがあります。J-POPとして、もしかすると火がつくかもしれませんので、気になる人は一度チェックを。


2005/07/16 
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 「中南米マガジンVOL.16」

「中南米マガジンVOL.16」2005年7月1日発行に、
CHARANGA HABANERAの記事を執筆しました。



幻のファースト・アルバムから昨年発売の「Light」までの
計14枚にわたるディスコ・グラフィーを中心に、
チャランガ・アバネーラのサウンドの変遷とその魅力を
5ページにわたって追求してあります。

キューバ通はもちろん、キューバ音楽を聴き始めの人も
CD購入ガイドとして、また参考資料として使えます。



販売店は、タワー・レコード全店、HMV全店、ヴァージン全店。
ディスク・ユニオン新宿ラテン・フロアー、
エル・スール・レコード、など。
置いてない場合もあるので、
そのときは店にお問い合わせください。

中南米マガジンのHPは以下アドレスです。
http://j-latino.com/LAM/chunanbei.html



2005/07/05 
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▼観葉音楽 Vol.7

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