JAZZNIN December 2005-January 2006 |
ジャズ人という雑誌の今月号はなんとラテン特集。
「Latin Jazz in Tokyo」というコーナーでは Grupo ChevereやTropicanteも登場していますが、 目玉はファン・フォルメルのインタビュー記事。
今回の来日時の数あるインタビューの中でも出色の内容です!
レコーディングした曲がアメリカ合衆国の禁輸政策で リリースされなかったこと。 バンドが35年間衰えることなく成功し続けてきた秘密。 他のキューバ・バンドとの差別化するものは。 そしてLosVanVanの曲作りの秘密。。。 ファン・フォルメルが自ら語っています。
LosVanVanファンならば、必見。 ご紹介できないのが残念ですが、キューバのトップ・バンドは リーダーのものなのだということがよく分かる内容です。
今年の夏はバンバン熱病が流行りましたが、 しばらくしてからこういうインタビュー記事を見ると 冷静に読むことができるので かえってよいかもしれません。
どこでも売っている雑誌ではないので、 取り寄せになるかもしれません。 バンバンの記事は1ページ半、 本の半分はなんと英文という変わった体裁の雑誌です。
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2005/12/20 |
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Tim☆Cuba@葛西Bar Havana |
イベント告知で皆さんご存知と思いますが、 今週末3日のティンクーバは、本年度ラストのスペシャル。 もちろんDJ KAZURUのMIXは新作も加えて大展開です。 音響も今回はパワーアップしていますので さらに熱くなりそう。
そして私の選曲ですが、 ■「Tim☆Cuba Disc 大賞」タイアップ企画ともいえる内容、 2005年に購入した新作から選りすぐりの推薦曲だけで2時間。 本年度の集大成です。
■前回の「Tim☆Cuba@葛西Bar Havana」でご好評いただいた Bailable Sonに話題のチャングイを加えての1時間。 REVE御大も登場します。
■1980年代後半から1996年までの 珠玉のキューバン・サルサ集で1時間30分。 これはかなりいい感じです。 ミッチェル・マサがチャランガ・アバネーラ加入前に 在籍していたバンダ・メテオロのお宝トラックをはじめ 初披露の曲も。
■最後は、ノン・サルサのキューバ音楽で始発まで。 心地よい新世代キューバ音楽に浸れます。
サルサ系だけでも、イベント初プレイ曲は半分以上。 聴いているだけでも充分に楽しんでいただける内容になりました。 この曲、気に入ったー!という方は 遠慮しないで問い合わせください。 お勧め曲満載の一夜になります。
ダンス好きはもちろん、キューバ音楽ファンは必聴の内容です。 いわば、音で聴き、踊れちゃう、Disc Reviewですね。 ぜひ、皆さんお越しください。
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2005/11/30 |
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HARUHIKO KONO |
Kono さんの初ソロ・アルバム 「A Cuba...Gracias!」 がキューバの新レーベル 「COLIBRI」 からリリースされました。
ディアカラのパーカッショニストとして、日本人としては唯一キューバ音楽界で活躍しているミュージシャンです。あるときは来日キューバ・バンドのコーディネーター・通訳として、あるときは現地のアテンダーとして、キューバ音楽に直接関わっている人はほぼ全てお世話になっているといってもよいでしょう。
この作品には、Kono さんの人柄そのものが現れたような暖かさと懐かしさのある音が詰まっています。 企画としても画期的。ユーミンや加藤和彦など日本のポップスの新旧有名曲を、キューバ人のトップ女性ボーカリストがその歌唱力を競うかのように歌い上げるというもの。Los Van Van のジェニー、Bamboleo のタニア、バンニア、そしてオマーラ、テレサ・ガルシア 、この夢のラインナップも Kono さんだから出来たことかもしれません。
バックのメンバーもピアノに RoLando Luna、ベースに Feliciano Arango、にはじまりもう書ききれない数のトップ・ミュージシャンばかり。キューバ音楽界にしっかりと足を下ろした長年の彼の活動がミュージシャンに評価されてのことでしょう。
作品のほうも原曲の日本らしさに忠実でありながら、キューバ音楽のグルーヴも感じることが出来ます。4曲目の「また会う日まで」8曲目の「あの素晴らしい愛をもう一度」9曲目の「あの日に帰りたい」は個人的にも好きな曲で、キューバ・バージョンもなかなかの出来になっています。
Kono さんの音楽活動を飾る記念盤といえる1枚です。
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2005/11/19 |
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YUSA |
YUSAを初めて聴いたのは、2002年デビュー作「Yusa」が出たときのこと。
「Cubamania!」をプロデュースした日向大介氏がTimCuba@PLUGに訪れた時、キューバのアーティストで要注目なのはYUSAだと話したら、凄く興味を持ってくれたことを思い出します。
そして今年、セカンド・アルバムとなる「Breathe」を発表し、11月には初来日を果たしました。ステージはあいにく観る事は出来ませんでしたが、皆さんの感想では素晴らしかったようですね。次回の来日では必ず観てみたいアーティストです。
彼女の音楽は、ソン、サルサ、ティンバ、ルンバの直接影響下にはなく、ロック、ポップ、HIPHOP、レゲトンでもないものです。どちらかというとブラジル音楽に大きく影響されています。
YUSAに関する多くの論調は「全く新しいキューバのサウンド」としていますが、これは正確には間違っていますね。 1994 年にデビューし現在まで4作を発表している、YUSAのプロデューサーでもあるGEMA Y PAVELがこのタイプのサウンドを既に確立させていたからです。
現在はスペイン在住ですが、その才能は素晴らしく、フィーリンやヌエバ・トローバ、カンシオンをベースに、様々な音楽をミックスし新しいサウンドを生み出しています。 YUSAのバックであるロベルト・カルカセースなどはいわば、GEMA Y PAVELの後輩格。 YUSAの音はGEMA Y PAVELサウンドにブラジル・テイストとジャズ・ファンクの要素を加えた感じといえます。
今の日本では、ゆるさのある音楽が望まれている時期が続いているので、音数の少ないYUSAの音楽が一般層にも受け入れられるのでしょう。ブエナ・ビスタ以降、最も日本の一般層にアピールしたアーティストであることは間違いありませんね。
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2005/11/12 |
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バンボレオ来日ライブ |
品川のライブにいったのですが、感動はしなかったのです。 前回のライブはイエローでも大阪でも度肝を抜かれたのですが。。。
それで、いろいろ考えてみました。 まず、このバンドは村上龍氏が呼ばなければ、 まだ来日ライブをする状態ではなかったのではと思いました。 まだバンド・サウンドが出来上がっていないような気がします。 ラサロがいろいろと指示を出しているというのは、 それぞれのパートでグルーヴを出し切れていない証拠。
ラサロのサウンドはクールでジャジーな点が特徴で キューバの他のバンドにはないものがあります。 ティンバというジャンルを最高点まで持っていった 稀有の才能の一人であることは間違いないのですが、 現在のメンバー、ボーカルでそのサウンドが再度構築されるかは これからだという気がします。
タニアは強力なボーカリストですね。驚きました。 キューバの女性ボーカリストのトップ3であることは 間違いない実力者です。 ただ、ラサロのサウンドとタニアの持ち味が 合わないような気がするのです。 ラサロはジャジーさとクールさが売り物。 タニアは過剰ともいえるファン・サービスや ロング・トーンのボーカルを聴かせるスタイル。 今回のライブはタニアのソロ・ライブのような感じで バンボレオらしさは過去のヒット曲を演奏した時のみでした。
この来日をきっかけにフルCDを発売し、 新生バンボレオが躍進することを期待してやみませんが、 あいかわらずラサロは ハバナでジャズのユニットのライブをやっていますね。 いったい、どちらが本当にやりたいことなのでしょうか。
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2005/11/04 |
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キューバン・サルサの新傾向 |
キューバン・サルサ、ティンバはこうだと思いこんでいる海外のファンに対し、現地のキューバ人ミュージシャンの志向するサウンドは、思った以上に拡散し、多様化しているようです。 ティンバか、レゲトンか、それともポップスかということ以外にも、サルサの中でも多様化が進んでいます。
最近発表になったJuan Carlos Calderonのデビュー作。 サウンドは、Gardi、Coco Freeman、あるいはRojitasあたりをもっと軽くした感じでアフロ・キューバンは微塵も感じさせません。 軽快なアクのない曲が淡々と続き、がつんとした例のモントゥーノはないのです。 キューバの音よりもニューヨークRMM系のサルサ・ロマンティカそのもの。
ついにこんなキューバン・サルサが出てしまったといえる内容ですね。 亡命系キューバ人がソフトなサルサをやっているのを明らかにキューバ側が追いかけた結果といえます。
ディレクトールは中期パウロのベーシストFrank Rubio。 イサックの「La Formula」にも参加しています。 ゲストにやっぱり、Coco FreemanとRojitasが参加。 目玉は、バンボレオのTaniaとのデュエット曲。 その昔、RMMのセルヒオ・ジョージ全盛期に発表されたLisette Melendezのアルバムの曲をカバーしています。 このあたりからも、RMM系のサルサ・ロマンティカ路線は明らか。
ポスト・ティンバは、ポップ化、ソン・テイストの重視、キューバン・サルサへの回帰、サルサ・ロマンティカへのシフトといくつかに派生してきた感じです。
RMMをはじめ、NY、プエルトリコのサルサがレゲトン・ポップス系に圧倒されて低迷している現在、この調子でいくと、そのうちサルサの多くのスタイルがキューバから発信される日がくるのかもしれません。
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2005/10/16 |
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進化するチャランガ編成のバンド |
キューバ音楽を示す言葉はいくつもありますが、大きくは編成とリズムとジャンルの3つに分かれます。1990 年くらいまではジャンル分けは弱く、クラシック以外は全て Musica Cubana だった感じでした。そのかわり、レコードの曲目には、SON、CHA CHA CHA、などとリズム表記が必ずあったものです。
「チャランガ」とは、ピアノ、ベース、ティンバレス、コンガ、ボンゴ、そしてボーカルとコロに、バイオリンとフルートを加えた編成を示す言葉で、代表的なバンドはオルケスタ・アラゴン。 このバンドがあまりにも偉大で、現在も現役で君臨していること、この編成の 18 番の楽曲が CHA CHA CHA であることが大きすぎること、などが影響してチャランガ編成の他のバンドがなかなかキューバのトップ・バンドの仲間入りをすることが出来ないできました。
ロス・バン・バンは、1970 年代にはトロンボーンを加え、バイオリン・フルートを残しつつも純粋なチャランガ・スタイルを離脱していましたし、マノリート・イ・ス・トラブーコもチャランガ編成を基本としながらもトランペットとトロンボーンを加えています。
今年 2 月にCDをリリースした CARLOS CARO Y SABOR CUBANO と7 月に新作を発表したマノリート・シモネーの出身バンドである MARAVILLAS DE FLORIDA はチャランガ編成を守りながら、現代的なサウンドを追及している数少ないバンドです。
カルロス・カロは、バイオリンの音色を強調し、スイートなソウルを彷彿させる都会的なサウンドが特徴。次作が期待できる内容です。
一方の、マラビージャスは、1980 年代からチャランガ編成のサウンドのモダン化を進めてきた中心的な存在でしたが、今作になってより TIMBA 的なリズムを多様したサウンドに変化してきました。若手がフロントに入ったのでしょう、老舗バンドの申し分のないグルーヴに勢いのあるボーカルが乗って、こちらもAクラス入りが近くなってきました。
6 月にはチャランガ編成ばかりを集めたオムニバスが登場。 その名も「 CHARANGAMANIA 」。 国外からみると珍しい編成という感じですが、キューバ国内では地方を中心にしっかりとバンドが続いているようです。
外部の音「レゲトン」に飛びつくバンドを評価するばかりでなく、伝統的なものを継承し、新しい感覚を加えていく作業がキューバ音楽の真の底力になっていることを忘れてはいけないと思います。
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2005/10/08 |
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バンドのコンセプト |
DJイベントでもそうですが、バンドはプロ、アマ問わずそのコンセプトが重要です。編成、選曲、演奏、ステージング、それらをみてみると直接説明されなくても伝わるものがあります。
先日行われた千葉サルサは、あいにくの強風の中での野外ライブだったので、演奏の出来は本来のものではなかったかと思いますが、 登場した3バンドともそれぞれ特徴がありとても楽しめました。
1番手は、真野倫太郎とソモ・ロ・マキシモ。 このバンドは、リーダーのメディコ好きが発展し、完全コピーを目指すというのがバンド名からいってもコンセプトですね。 ダンサーの振り付けあり、コロカンタのリード・ボーカルによるバンバン、バンボレオ等のカバーがあったりして、キューバ音楽好きが楽しめるところも売りになっています。
2番手は、オルケスタ・デ・ラ・カンダ。 踊りやすい流行のサルサを演奏するのがコンセプトのようです。 通常、バンドを組む人は演奏重視のサルサかキューバンに走るものですが、ヒット曲、それも歌物ばかりを選択するのは珍しいといえるでしょう。ボーカルも演奏もまとまっているので、サルサ・ダンス・イベントではぴったりのバンドです。
3番手は、SINGO。改名前の前身バンドを見たことがありますが、このバンドでは初めて。この3バンドの中では明らかにプロといえる演奏水準。ボーカルも歌える人材。オリジナル、日本語歌詞を基本としているようです。
3バンドを見ての感想を少し。 真野倫太郎は、好みを最優先にしているだけあって、ボーカルの歌いまわしはキューバもののDJをしている僕が唸るほどの完成度。 バンド演奏はこれからもっと良くなりそうなので注目の存在です。
デ・ラ・カンダはバンド・グルーヴが出てくれば、ボラチョスに近づけるかという感じですが、選曲重視のようなので、まるでDJのような不思議なバンドといえます。
SINGOは、オリジナル曲が勝負どころ。 アグレッシブな演奏を聴かせるナンバーと歌を聴かせるナンバーを分けて考えた方がよさそうです。アレンジが歌詞とあっているかどうか、日本語歌詞を追求するならばその辺りが重要と感じます。まだ発展途上、歌と演奏はレベルが高いので作曲とディレクションしだいですね。
大阪に在住しているのでバンドを見る機会がぐっと減ってしまいましたが、たまには皆さんの演奏の状況をみるのもいいものです。
バンド演奏は、実は、見ている人より演奏者が気持ちよいので、一度ステージでの興奮を味わうと他の苦労をかかえてもまたステージに立ちたくなるもの。 多くの日本人バンドの中から新たに凄いと思えるバンドが登場することを願っています。
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2005/10/01 |
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