幸田文という人は
父、幸田露伴に
子どもの頃から
「台所仕事」について
スパルタ教育をされた人。
焼き魚は
出来立てをさっと出せ、
枝豆から湯気は立っていても
鼻の頭に汗などかいて
暑苦しい顔で差し出すな、
皿からはみ出さんばかりに
これでもかと
盛りつけるような
騒々しい膳を出すな・・・
などなど、小姑も真っ青の
細かい注文を
毎日の食卓でだす露伴ですが
まあ
言っていることはもっともなので
娘の文も、面倒くさいと
思いながらも、これこそが
真っ当な料理でありもてなしであると
思い、父の期待に応えて大人になるわけです。
だから
幸田文の台所への
執着はすさまじい。
この本を読んでいると
その、執着が空恐ろしくもなるけれど
同時に
自分もこのように
ぴりりと 気合いの入った
膳を整えてみたいという
気にさせらます。
夏の食べ物についての
項を読んでいたら
「よく
ひやむぎに赤いのを一本
片結びにして色どりにしているのを見ます。
(中略)
みつばの青といっしょに取り合わせていることも
ありますが、
白、赤、青となると幼稚です。
(中略)よろず
景気を添えようというなら
すっきりといきましょう」
と記してあって
ハッとなりました。
料理写真は
カプレーゼに代表される
白、赤、緑(幸田氏のいう青は
緑を示していると思われます)が
最も効果的においしそうに見えるものですが
フィルターを通さぬ
現実の食卓では
「幼稚」となる。
粋な食卓について
改めて考えさせられる一文でした。
(DJ KAZURU)
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