昨年辺りから
水上文という人のことが
気になって仕方ないのだけれど
理由のひとつは現代文芸評論の最先端に
いる人であるということで
もうひとつは、ジェンダーの
多様性について明快に疑問を
出してくる人だからです。

これはトランスジェンダーの
水上がカナダ在住の恋人（日本人）
とクィアの権利に関して
最先端であると思われる
カナダのパレードに参加した旅行記
しかし、そこで見聞したことは
すべてジェンダーにまつわる問題意識に
つながることで、これを知っておくことが
現代人の証ではないかと
私は考えています。

クィアと言われると
私は、1988年に一部の人の間で話題になった
バロウズの「クィア」という本が
おかまという副題が付けられ日本で
流通したことを思い出すのですが
おしゃれ文学に強いペヨトル工房から
出てたこともあって、印象的でした。

そういうわけで当時
おかまというか性的変態のような
意味でクィアなる単語が流布したことは間違いない
のですが、今は
「そのように侮蔑されていた言葉を
逆手に取ってシスジェンダーかつ異性愛者
以外の遺物とみなされる存在を包括する言葉」
として使われているとのことです。

私は昨年辺りから水上氏が
クィアを使う文脈から、なんとなく
変態という意味で使っていないのはわかったのですが
ようやくはっきりしました。

それにしても新しい概念で
使わなければいけなくなってる言葉の
なんと多いことよ。

ダイク、は
男性っぽい見た目のレズビアンに対する
蔑称であったが、やはり当事者たちが
敢えて名乗る言葉に変化しているらしい。

ブッチ、は
男性的なジェンダー表現をしてる
女性のこと。

フェム、は
女性的なレズビアンを指す言葉だったけれど
女性的なジェンダー表現をする
クィアを指すものになってるらしい。

トランスマスク、は
性自認やジェンダー表現が男性的、ただ必ずしも
男性のアンデンティティを持ってるわけではない
出生時に女性を割り当てられた人を指す。
ノンバイナリーも含みうる。

こうなると何が何だか、と
一瞬思ってしまうけれど、これが
実際の性自認のありようなんですよね。
自分が無知でがっくりきました。

有色人種でフェムである水上と
同じく有色人種でマスクの恋人は
日本でいるより遥かに彼女たちにとって
居心地の良いカナダではあるけれど
だからこそ気づく差別問題もあって
非常に興味深かったです。

カナダは比較的にクィアの権利を
認めてる先進国のようだけど、例えば
大企業がイメージアップのために
うちの会社はクィアカップルに権利保障します
と言ったところで、その大企業に努めている
クィアというのは、そもそも高給取りの
白人ゲイだったりするわけで、真に
給付金が行くべき収入の少ない
レズビアンカップルになにかしらの
手当があるわけではない、と言われれば
そうか、表層的にクィアも権利と言っても
実情は恵まれてるものが
さらに恵まれるだけなんだと分かります。

シスジェンダーのゲイカップルには
感じない悩みというのが多くのクィアにはあって
トランスの問題はとても根深いのですね。

また、女性が受ける差別は
有色人種の受ける差別、原住民の
受ける差別へと考察を広げてくれて
結局は誰かが誰かを差別して
踏みつけにすることがまかり通ってることの
問題なんだと水上は導きます。

なんと森崎和江の名まで登場し
そうか、私が興味あるのは結局
弱者差別の問題だからなんだ、と
思い至りました。

私はシスジェンダーの
ゲイ男性が周りに多いということもあり
まったく
レズビアンの抱える日常的な困難に
気が付きませんでした。
私の友人たちが何の問題もなさそうに
暮らしているのは彼らが弱者ではなく
恵まれているクィアだからだったのです。

パレードに関心もなく
レズビアンの存在なんて別世界。
そりゃあなにも普段の生活で困っていないんだから
パレードの必要ないですよね。

色々思いは渦巻きますが
今後もう少し勉強していきたいですね。
シスジェンダーで異性愛の私がなぜ
そう思うかといえば、女性であるというだけで
じゅうぶんマイノリティである自分が
クィアの問題と無関係とは思えないからです。

もし自分が白人のシスジェンダー
かつ男性だったら、これらの問題は
知らんがな、になってたのでしょうか。
わからないけれどそういう鈍感さも
恐怖です。

DJ KAZURU