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2023イヴェント休業中、各コラム更新中《TIMCUBA動画有》

18644 2023年現在timcubaのイヴェント休業中です。 コラムは随時更新していますので 各メニューを選択してくださいませ。 https://youtu.be/BELIZJu0ruM 2014年の過去動画ですが 六本木で思いきりダンスと音楽を味..

2/10 復活TIM★CUBA

17568 2/10 麻布トロピで久しぶりに ティンクーバやります。 DJ KAZURU が昔作った キレッキレのリミックス中心。 翌日が祝日なので ゆっくりお楽しみいただければ幸いです ************** La Tropi Azab..

2/1 イサックを語る

17586 下北沢ボデギータで 福田カズノブがイサックデルガードを語る マニア向けのイベントです キューバ料理もご注文いただけます ..

蓮根ボーイ

宇能鴻一郎、短編集
「アルマジロの手」拝読。

1969年に書かれた宇能鴻一郎の
「心中狸」
淡路の人形浄瑠璃の話がちょっと出てきます。

「月と鮟鱇男」は
意地汚いまでに食に執着し
残飯であってもそこにあるものは
胃に収めないと気がすまない
悪食の男の話。

若い女に
その欲望を見透かされ
食べ物と肉体を与えられるが
仕事で築いた財産も
会社も奪われ腑抜けのように
なっている。

鮟鱇が調理場で捌かれるのを見て
魚でもかもめでも
胃袋に入るだけ詰め込んでしまう
鮟鱇に共感し
雌の鮟鱇にぶら下がってるだけの
人生に憧れてしまう。

ほかに鰻に執着する男の話など
性欲と食欲を直結させた
テーマはありきたりのようだけど
ねっとりと読ませるのは
さすが、という短編集でした。

さて、ここからが本題ですが
鮮烈な読後感の
「蓮根ボーイ」こそは
長く読まれるべき作品です。

これはほとんど
大江健三郎の「人間の羊」と
並ぶような短編です。

考えてみれば
東京大学出身で
芥川賞作家、これも大江健三郎と
似た経歴の宇能鴻一郎。
年齢も一つ違いですね。

戦後体験は宇能鴻一郎のほうが
壮絶っぽいですが、同じ少年時代に
戦後を体験したという共通項はあるでしょう。

戦後、貧しい日本の中でも
貧しい地域、さらに
そこでも底辺の生活をしてる
少年の物語。

彼は泥だらけになって
蓮根を掘るうちに
パンパンを連れてる米兵の
慰み者になります。

皆が彼のことは
蔑んでもいい
いじめてもいいと思ってる。

そんな
存在になりきってでも
鯰や鰻を捕まえに行き
蓮根を取ってきて
金銭を得て
母親を助けたいのです。

泥の池に浸かって
息絶えた彼を起こしてやると
結核に冒されていた
彼の喉から鮮血があふれる。

なんという美しい
ラストシーンでしょう。

宇能鴻一郎は
泥に咲く花のように
貧しい少年を描きました。

・・・

透明な水の底に
少年は上を向いて沈んでいた。
頬の赤みは消え、白蝋のように
清澄な死顔だった。
手にはまだ、鰻刺しの板を握りしめていた。

水面に陽の光はまぶしく躍っていたが
水は冷たかった。
やがて消防団と警官が来て
少年の死体を水から上げた。

触れられて、姿勢が変わった時
少年の口から、おびただしい
血があふれ出た。
それは煙のようにゆっくりと
水中に拡がり、たちまち消えていった。

少年がとても
美しい顔立ちをしていたことに
居合わせた人々は、そのとき
初めて気づいた。

・・・

DJ KAZURU


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