
「コンビニ人間」を読んだとき
文章はすっきりしているし
好感は持てたけど、村田沙耶香が
こんなにすごい小説を書く人とは
思いませんでした。
この10年でそもそも持っていた
力が発揮され始めたのか…とにかく
全ての人が
「これがお前の人生だよ、醜悪だろう」
と、観たくなかった真実を
突きつけられるような物語です。
現代の日本に
近いけれど、少しズレた世界線の
この国では「ウエガイコク」の文化に憧れ
「シタガイコク」を見下すような
空気がある。
優秀とされる遺伝子を持つ人たちが
存在するが、この国では
忌み嫌われていて迫害の対象でもある。
遺伝ではないためにみな検査を受けるまでは
自分や自分の子がその遺伝子を持ってはいないか
恐れている。
女は収入が低いので
家庭内では男が女を人間家電として
こき使い、その男会社で使役され
長時間労働させられている。
富裕層は愛玩動物を
飼っているが、いつしかそれは
人工子宮が備え付けられた
性的排泄の対象にもなったので
人間家電である妻たちは
セックスと妊娠からは解放される。
男性の一部には、セックスを男の
性的排泄のために女性が我慢しているという
意見を受けいられないかもしれませんが
男性の身勝手な性欲のはけ口になっている
女性は男性が想像するより多いのです。
セックスをよしんば楽しめたとしても
そのセックスで
うっかり妊娠でもしようものなら
会陰が裂けて寝たきりになるような
出産までしなきゃならない女性の
絶望が男に想像できますかね。
主人公は、幼い頃から
その場その場で相手が望むような
キャラクターで存在するようにしている。
同級生を虐めることが
大好きな子には、自分も
いじめに軽く加担する発言をし
悩む友人に手を差し伸べることが
生きがいの優等生タイプの子には
震えながら悩みを告白してみせる。
すべては目の前の人間が
心地よくなってくれるため
それが自分にとって軋轢のない
世界を構成することになるから。
大学で、バイト先で、地元の友達
恋人といるとき
主人公は10も20も「世界」を使い分け
SNSはその種類だけのアカウントを
持っているから、一方で
黒に同調するコメントを残し
もう一方では白だと書き込みをする。
本当の自分というものがあるわけでもないけれど
全ての「世界」を俯瞰して見ている
「世界99」というものは感じている。
そんな奇妙な生き方をしているのは
自分だけかと思っていたら
同じように世界を使い分けている
女性に出会って感激する。
しかし、便利な愛玩動物は
人間のリサイクルであったことが分かり⋯
と、ここまでが
上巻ですが、こういうことって
誰にでもあるように思うんですね。

目の前の人との会話を
スムースにしていくために
相手に合わせた自分にしていく
そのほうが面倒臭くないから、適当に
相手が喜びそうな言動にしていくってことは
誰でも心当たりがある
行動なのでは。
平野啓一郎が
生きやすくするために、コミニティごとに
自分の別の面で対応していく
「分人」という言葉を提唱しましたが
こちらの「世界」は、相手が
こうでたらこう、という
一見不思議な対応です。
でも、相手に合わせなければ
そこの空気が居心地の良いものでなくなるから
合わせていくのです。
下巻は
そのように相手をトレースして生きてきた
主人公も中年となり
特別な遺伝子をもった選ばれし人々が
世界を支配し、普通の人たちはただただ
揉めずに生きていければいいという
風潮になっており
いよいよ人生の希望は無くなります。
女性であるというだけで
若い時から性的に消費され
人間家電として家事を完璧にやり
実際に性的排泄のために
身体を酷使され、子供を産むという
生死に関わるような事業まで
押し付けられる。
便利なはずの愛玩動物の
世話に追われ疲弊する毎日。
さあ、
あとは人生をいかに
平穏に終わらせるかだけ。
主人公は49歳で
人間のリサイクル品である
愛玩動物そのものになる道を選ぶ。
この小説では
良き未来、良き社会を人類が
突き進んだ結果
世界はクリーンな人間関係
つまり、大声で主張したり
汚い感情をみせることを良しとしない
方向にどんどん進んでいきます。
人間同士の軋轢は、全く同じ
性格と記憶を持っていれば起きようもないから
手術により脳がコントロールされ
家族はみな同じような表情の
人間になっていく。
誰かに自分を理解されたくて
泣いて気持を訴えることもなくなって
齟齬のない穏やかな人生。
これが美しい国?
強烈なディストピア小説でした。
・・・
朝日新聞書評は

青山七恵。

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