五瓣の椿を紹介したら
逆に虚空遍歴、と
友人から勧められ山本周五郎を
久しぶりに読みました。

ひたすら端唄ではない
新しい自分なりの節を創作したいと
冲也ぶしの完成にもがく
浄瑠璃三味線奏者の冲也。

身重の妻を置いて
創作の手がかりを求め旅に出るも
常磐津の派閥争い
歌舞伎芝居の利権争い
男女のもめ事などが
彼を阻み、またなかなか
これという曲想にも出会えません。

冲也の音色に魂でひきよせられる
芸者のおけいは、旅に同行して
彼を支えるも、男女の仲にはけしてならず
どうしてもつかまえられない
三味線の節の儚さに心身をすり減らす。

途中悪い女に誘惑されたり
おけいの旦那に斬り込まれそうになったり
人間の浅ましさを垣間見つつ
二人の度は冲也の死であっけなく終わってしまう。

こういう求道を
ひたすら描いた山本周五郎のすごさに
圧倒されるとともに
芸道を切り開くことの難しさを思いました。

ただ一つの三味線の音に
惹かれて人生を捧げる女というのも尊い。
その女おけいの独白、語り部分が
物語と交互に現れ、その部分の魅力がまた
深いのです。

理想を曲げられずに
死んでしまった男、女もまた
これで自分の一生は終わったと感じている。
なにかとても大事なことが
ここにあったように思われました。

巻末に池澤夏樹が
フォスターとの関係について
言及してますが、これは
読んでるうちには気づきませんでした。

松岡正剛がやはりフォスターとの
関係を書いてる文章を
千夜一夜より拝借。

DJ KAZURU