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2/10 復活TIM★CUBA

17568 2/10 麻布トロピで久しぶりに ティンクーバやります。 DJ KAZURU が昔作った キレッキレのリミックス中心。 翌日が祝日なので ゆっくりお楽しみいただければ幸いです ************** La Tropi Azab..

反骨のダンディズム

今年に入って急に気になってしまっている
生田耕作。

それなりに著作や訳した本を
読んではいるものの、入手困難な
本も多いので、その仕事を
網羅することは難しいなと思っていたら
こんな本が出ました。

「生田耕作 反骨のダンディズム」。

松本完治氏は19歳から31歳まで
生田耕作に師事したという、いわば
最後のお弟子さん。

更にぐっと若い生田耕作ファンの
安堂龍さんが聞き手で松本氏から
言葉を引き出す構成の本でした。

世の中澁澤龍彦は常に人気があるのに
澁澤に先立ってフランス文学
エロティシズム文学の
とんがったところを読み、訳してきた
生田耕作なのに、なんとなく
陽が当たらなくなっていることが悲しくて
ついに生田耕作を知らない人にむけ
鴨東忌、33回忌を節目に
生田耕作を伝える作業に出たという
意気込みを感じます。

いち早く読みたかったので謹呈本拝借。

原稿をあしらった装丁なども
素敵、師匠への愛ですね。

翻訳には語学力ではなく
国語力が大事、日本の古典や
江戸漢詩、漢文も身につけて置かなければ
いけないという方針で、お弟子さん達にも
そこを大切に伝えていたとか。

そもそも大変な英書読みだったらしいです。

マイナーな英文学、仏文学作品を
アタリをつけて丸善で原書を注文し
読み込む。

今と違って
ネットで簡単に配送されるわけでもない中
すごい情熱で多くの作家の本を独自に
集めたわけですね。

松本氏いわく、生田耕作の文章は
三島由紀夫に絶賛されたほどの完璧さ。
読みやすく、リズムがある。
原文のニュアンスを的確に捉えながら
それを損なわず、作者の情念を移し替える
日本語の使い回しの卓越した上手さ。
後から同じテキストを他の方が訳した
事例もあるようですが、確かに
並べて読んでみると、生田耕作の
レベルの高さがわかります。

フランス文学者の野崎歓氏も

「大瀑布的文体とはよく言ったもので
翻訳者にとっては一瞬も気の抜くことの
許されない試練の連続だろう。だが
生田訳を読んでいると、奔流に嬉々として
身を投じ、存分に泳ぎ回り、流れの隅々まで
知り尽くしたうえで成し遂げられた翻訳という
印象を受ける」

と、サランドール
「世界の果てまで連れてって!…」
の2022ちくま文庫復刊の
解説で書いてるそうです。

生田耕作といえば戦時中
旧満州での二等兵経験、これを

「中国大陸を連れ回された
苦々しい戦争体験をもつ生田耕作が
セリーヌの言葉と噛み合った」

と、書いたのは書肆ひぐらし店主ですが

「戦乱と国家反逆罪に問われて
逃亡・隠遁生活を生き抜いてきた」セリーヌを
誠実に読めたのは生田耕作の同時代の
兵役体験あってこそ、と松本氏も書いてますね。

翻訳の確かさ、知識の豊富さは
澁澤龍彦も認めるところで、生田耕作に
質問して返ってきた文章を、ありがたく
そのまま著書に脚注で載せますというふうに
言ったとか。

山崎俊夫、山田一夫、木水彌三郎ら
しられていなかった作家の発掘、出版も
生田耕作の業績ということになるでしょうが
自分はこのなかでは山崎俊夫しか読んでいないので
ぜひとも入手したいものです。

幻想文学というジャンルの括りは
曖昧ゆえ嫌い、一方
「花柳小説」を愛していたよう。

同録の
インタビューでも
幻想文学誌あれなに?
メルヘン坊やの集まり?
矮小化するな! 
みたいなこと言ってるのが面白すぎた。

鏡花本の美品を求めて
築き上げたコレクションは圧巻らしく
拝見してみたいものですが
そんなところが金子國義と響き合ったのでしょうね
金子國義のことは相当に
評価していたと思われます。
エピソードから察するに
金子國義の芯の部分を理解してたのも
生田耕作だったんじゃないの?

「身銭を切らぬ学者風情は断ずるに足らず」
とは近世文学の蔵書家、練木準の名言だそうですが
そのとおり、身銭を切って蒐集されたそう。

本は安くて読めればいい、という
意見には

「それは能率一辺倒で
浪費の陶酔を味わったことのない
無粋な人間の言葉。
書物は人智がつまったもので、造本には
工芸が見られ、挿絵には美術がある。
そこに情熱を集中しそれで身を滅ぼす人間の方が
私には好ましい」

と、言ったとか。

生田耕作について

「過去の書物を愛しただけではなく
自らの手で理想の書物を造りだそうとした」

と恩地源三郎氏が「愛書狂」新装版
(2014平凡社ライブラリー)の解説で書いてるそうで
なるほど、という感じ。

風合いのある書籍用紙
クロスや革の美しさにこだわった本は
松本完治氏や、ごく少数に継承されているけれど
美しい本を今後作るのは色々と大変そう。

三島由紀夫については
「るさんちまん」2号に松本完治氏が
「死とエロスの彼方に」を書いたとき
褒めてたということから
エロティシズムによる死、というふうに
生田耕作も捉えてたのでしょう。

やっぱり性と死は同じ問題なんです。

そのほか
軍国主義になびかぬ永井荷風を敬愛したことや
映画
「残菊物語」溝口健二
「藤十郎の恋」山本嘉次郎
を絶賛してたことなど、生田耕作に
ぐっと近づけるよき本でした。

巻末に1992年に行われた
生田耕作インタビューつき。

アンドレ・ブルトンと
ジョルジュ・バタイユこそ二十世紀において
もっとも巨大な足跡を残した思想家。
文明が招来した最悪の結末である
第一次大戦後に現れたのがブルトンであり
そのプッシングボールとしてのバタイユ。
彼らの思想こそ、こうした悲惨な魂の総決算の上に
成り立ったものであると思うんです。

(中略)

錬金術に、愛と死の神秘に、
客観的偶然に、黒いユーモアに、あるいは
エロティシズムと死の深淵に、
一生涯おのれの裡に、比類なく透明な
結晶的緊張を保ち続けてきた驚くべき
知性と精神力には、全く
脱帽せざるを得ません。

DJ KAZURU


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