キューバ音楽は長い間、ライブが一番でスタジオ録音ものでは
その魅力を伝え切っていないといわれてきました。
確かに欧米にあるようなサウンド・システムが揃ったスタジオは
キューバ国内にはないでしょうし、今や当たり前になっている
デジタルなサウンド加工は、キューバものではあまりお目にかかりません。
そんな中、ロスバンバンは前作「チャペアンド」から
欧米に近い録音方法を取り始めたのです。
それはまず、バンド全体での演奏を仮に録音しておいてから、
1パートづつ録音し直して置き換えていく方法。
音の正確性、厚み、バランス、音質は一発録音より
はるかに勝る楽曲が完成します。
確かにキューバ音楽の魅力であり真髄ともいえるグルーヴは若干
弱まっているのは事実。
しかし、ファン・フォルメルはそのあたりを分かった上で、
敢えてこの多重録音を行っているのではないかと思うのです。
それは、これから経済的に豊かになっていくであろうキューバが
欧米と並んだ時に、
エスニックとしてではなく、普通に聴かれるサウンドを
今から作っておくべきだという思いではないかと。
グルーヴが弱いと指摘するファンには、
「どうぞライブにいらして下さい、
あなたの望む怒涛のグルーヴを提供しましょう」という回答。
ロスバンバンはCDとライブ、2つの聴き方を提示しているのです。
追伸
アオラ・コーポレーションから日本発売となった
「アラサンド」のライナー・ノーツは私、福田カズノブが執筆しましたが、
一部誤植があったまま流通しています。
それは、ロス・バン・バンと表記されるべき所が、
5か所「チャペアンド」となってしまっているところ。
その部分はご理解、解釈いただいた上で、
内容は必見とだけお伝えしておきます。
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