
埋もれたる作家であった
山崎俊夫を発掘し、高値で市場に流通させたのは
神保町で暗躍していた
高名なせどりではないか
という説を聞きました。
それを不思議に思った
生田耕作が電話で大塚書店に
問い合わせてきた際
対応したのが、若き
書肆ひぐらし店主だったので、しっかり
記憶にのこっているそう。
その後サバトから
山崎俊夫は纏った形で刊行されたわけで…どこで
縁が繋がるか分からないものですね。
そこから大分時は流れ
現在非常に入手しにくくなってしまったのだけど
ボーイズラブ括りで刊行された
文庫に収録されていました。

「執念」は谷崎の名を騙り
詐欺を働いた
倉田啓明をモデルに
書いた小説。
読んでみれば
なぜこれがマイナーな作家なのかと
思うくらい魅力的な短編でした。
悪人、とその男を
蔑みつつも、その男の小説にも
人間そのものにも、抗えない魅力を
感じてしまっている煩悶。
そんな心情を描いた短い作品です。
それ限り私はあの男に
逢ったことがございません。
悪事を働いて捕まったというのは
年貢の納め時が来たのでしょう。
しかし私は未だに
あの男を心から憎むことが出来ません。
私はもう一度あの男の口から
美しい虚言(うそ)を聞きたいと思います。
倉田啓明の短編
「若衆歌舞伎」も収録されており
さすが谷崎を騙っただけあって
こちらも文章が上手、それだけでなく
ちょっと赤江瀑が
書いてそうな話で私には
大ヒットでした。
歌舞伎の世界に身を置く
若い男たちが美を求めて
つくりあげた世界に耽溺する。
着物、香、調度
音曲、花鳥風月を
このように描写できる作家は
絶滅しています。
その一点だけでも
価値のある小説、しかも
若い男たちの吐息の熱さまで
伝わってくる描写に
胸が高鳴りました。
薫籠、とは衣装に
香を焚きしめるために
香炉にかぶせた籠のことですね。
くちづけしているうちに
二人の身体が溶け失くなってしまって
この籠の上に置いた
着物だけが残されるなんて
たまらないな。
こんな小説があったとは…
大正時代の作家も深く知りたい。
二つの魂は、まつわり燻ゆる香の
薫香に誘われて、知らず識らずの裡に
結び合わされ、鼻腔から出す小さな呼吸は
皮膚に冷たく触れて、熱く火照った
唇のあたりを心地よく冷やした。
そうして香枕から立ち昇る伽羅の香は
麻薬のように二人の精神を溶かして、今にも
身体の肉塊が、片っ端から飴のように溶けて
流れるようにおもわれ、その跡には只
蝉の蛻のように、伽羅に薫籠せられた
鬘や衣装だけ残るのではなかろうかと
怪しまれた。
DJ KAZURU
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2/10 麻布トロピで久しぶりに
ティンクーバやります。
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