金原ひとみ　著
「アンソーシャルディスタンス」
拝読。

この作家が気に入っているし
今の時代らしいものを読みたくなって
購入した短編集。

「ストロングゼロ」
は、コンビニで度数の高い
缶の酒を買っては一日中飲み続ける
女の話。

ストロングゼロから
アル中が進むことは社会問題にも
なっていますが
私は、それより以前
林真理子氏が高齢者施設を舞台にした
小説でライトなアル中が増えてることを
を知りました。

しかし金原作品に登場する女は
やることがない老人ではなく
社会性があり、
編集者という仕事にもついており
恋人もいる、セックスフレンドもいる。

小さな問題をアルコールで
紛らわすうちに、酩酊が常態化し
ついには
大きな問題が生まれるという
坂道を転げ落ちるような話。

たまっていったストロングゼロの
空き缶がそのまま主人公の
空っぽになってしまった
有り様のようです。

「デバッガー」

やはり仕事も恋愛も
人並み以上にこなしている女性が
10才以上年下の男と付き合ううちに
容姿の老化が勝手に耐えられなくなり
整形を繰り返す物語。

男はただ好きだと言ってくれるのに
横たわる年齢差には不安しかなく
20歳代の過去の自分の顔と比べることを
止められず恋に集中できない。

平穏に恋愛するために始めた
整形なのに、心はどんどん
かきみだされて、破綻へ向かう。

主人公はたぶん人並み以上の
容姿なので、劣化(あたりまえのことだ)を
受け入れさえすればすべての問題は
解決するのだけど、その道には
頑として背を向けている奇妙さ。

「コンスキエンティア」

これも先の二作同様、
仕事、家庭、恋人と
アグレッシブに動く女性が主人公。

なぜかどの主人公も
しょっちゅういろんな人と
セックスしているのだけど、相手が変われど
自分が心からは望んでいるわけではなく
流されるようにそうなってる。

色々なことを器用にやるのに
男の呼び出しは無視できず
大声で求められれば
自分をポンと与えてしまう。

・・・

人生の中で特別
「間違った」経験を
してこなかった私は、今
自分が直面してる
「間違ったのかもしれない」状況に
どう対処していいのか分からなかった。

考え得る可能性は
考え尽くした、検索し尽くした。

ヒアルロン酸の好意的なレビューは
ほとんどが施術直後に満足な仕上がりを
実感しているというもので、施術直後に
満足がいかない場合は満足いかないままの
場合が多いようだった。
だめだ。
私はきっと間違えたのだ。

ホテルに行った日から毎日
何かとやりとりをしている大山くんから
LINEが二通届いていたけれど、
開く気になれないままどうしようもなくなって
ビールを開けた。
本当は施術当日はアルコールを
控えてくださいと言われていたけれど、
もうどうしようもなかった。

そういうとこ。

結局そういうとこなのかもしれない。

(デバッガー、より抜粋)

DJ KAZURU