「結～妹背山婦女庭訓波模様」
大島真寿美　著、拝読。

前作の「渦」を越える面白さです。
人形浄瑠璃の魅力を知ってしまった
主人公「松へ」は、普段客席にいる
我々の目線でその喜びに浸っているので
めちゃくちゃ共感。

「松へ」は酒屋の跡継ぎでありながら
浄瑠璃を唸るのが好きで
芝居が好きで
絵を描くのが好きで
とても親父のような経営者にはなれぬと思い
商売を変えた大阪の旦那。

好きなことをして
困らぬだけの金が入り、同じように
浄瑠璃好きの人間と付き合って
この世を満喫している。

調子よく生きてるように見えるけれど
なんて人間らしいのだろう。

周囲を取り巻く
戯作者になりたいけどいまひとつ
力を発揮できず足掻く人や、女ゆえ
表に出ずアドバイザー役に徹する者。
後進の指導に意欲を燃やす者や
浄瑠璃から歌舞伎の世界にいくことで
居場所を見つける者。

登場人物すべてが
浄瑠璃に魅せられ、物語を愛し
それはつまり人間が行き交い
時にはままならぬことが起きる
世の中が好きってことなのです。

「浄瑠璃地獄」とはまあ
よく言ったものです。

素人も玄人も飲み込む
この魅力的な地獄。

もう人間の負けかな？
この世の終わりが近づいてるのかな？
そう感じる日々において
江戸期の浄瑠璃パワーは
実に眩しいです。

DJ KAZURU