芥川賞受賞作
「デートピア」拝読。

安堂ホセはデビュー作を読んでいて
さほど印象に残らなかったけど
これはぐっと面白くなってる。

まだ三作目とのことなので
成長中なんでしょうね。

デートのリアリティショウの
話だと宣伝されてるのですが
華やかなTVショーのような話、そこは
本題ではなく、我々の
知らない世界を突きつけてくる
作品でした。

我々の知らない世界。
といえば市川沙央がやはり
芥川賞受賞時にそれこそ
喉元にナイフを突きつけるかの如く
やってのけたわけです。

障害者の現実も我々には
根幹を揺るがされるものがあったけれど
安堂ホセは
自らもそうである
ブラックミックスルーツを
突きつけて
更に作中で
無国子女だと言ってみせる。

最初から根ざす国を持たない
存在として、戦時のデート兵から
生まれた子どもたちの
ことも持ち出して突きつける。

悲しいくらい
私達は何も知らない。

マイノリティに理解を持ってると
インテリ面をしているくせに
本当のことは何も分かってないと
頭を垂れる以外にない。

そんな小説でした。

またまた
山田詠美の評がぐっときました。

「読むそばから古びる言葉を
惜しげもなく書いては捨てて
熱を冷ましながら進むところが良い」

「全てを分解して短編をものしたら
さぞかしタイトで読み手の体内に
ヒットするものが」

ってそのとおりな気がする！

・・・

2020年。
アリアナの黒人化が止まらない。
昔からギリシャにルーツがあるって
言ってたのを、やっぱり北アフリカに
ルーツがあったかもって言い始めたり
彼女は色々なことを企てて
文化盗用だって騒がれたりもしたけれど
もう誰もそんなこと言わないし、

（中略）

2018年の
「thank u, next」
とか2020年の
「Positions」
あたりの彼女の容姿は、黒人化が
さらに洗練されていた。

生え際が浮き、明らかにウィッグだと分かる
ストレートヘア。肌のタンニングはほどほどに抑え、その代わりアイメイクの明るさによって
相対的に肌の暗さを示す。分厚い唇。
そしてさらに、肉体だけじゃなくて
写真の質感すらもが、黒人を倣った。

フィルムカメラで撮ったような
フラッシュの強い、白飛び気味の肌。
よく往年の黒人シンガーたちが
どうにか自分を白人化させるために、あえて
肌を白飛びさせたモノトーンの写真を
CDジャケットに使うことが多かったけど
アリアナはそれをなぞった。

ただ黒人を真似るんじゃなくて
「白人になろうとしてる黒人のありさま」
を真似るなんて
そんなこと誰にも思いつかない。
安直にドレッドとかに手を出す
日本産のラッパーや、模造黒人時代のおまえとは
やっぱりレベルが違う。
相手をまんま真似るんじゃなくて
相手が自分になろうとしている状態を
真似ることを、モモはアリアナから学んだ。

・・・

DJ KAZURU