「ヤクザの子」
石井光太　著、拝読。

ヤクザを親に持った子供
人生を追ったルポ。

まずどうしてヤクザが
子供を持ってるかというと
底辺の構成員というのは
とにかく上納しなければ
いけないシステムなので、手っ取り早く
覚醒剤を売って稼ぐわけですね。

利鞘とリピーター率の高さで
まあ覚醒剤を売るのがいい。

ふんぞり返ってるだけで
金がバンバン入ってくるというのは
暴対法前でも大幹部以上の話です。

覚醒剤っていうのは打ってる間
この上なくいい気分になれるわけだから
売ってる方も使ってるわけです。

覚醒剤はセックスと親和性が高く
最高に気持ちよくなれるので
避妊とか気にしてる暇なくやるんですね。
そして知らない間に子供が生まれてる。

本当に「知らない間」という
ケースが非常に多くて
びっくりしますが、キメ過ぎてて
妊娠にも陣痛にも気づかず出産したり
逮捕されて獄中で出産してる例も
多いようです。

それを何度となく繰り返す
人がいっぱいいて、大勢の子どもを
生活保護もらって養ってたりする。
ヤクザの家に住んでると
生活保護もらえないから、入籍しないとか
同居しないとか、色々方法があるようですね。

24時間キメてるような人に
マトモな子育て出来るわけないので
子供はネグレクトなのが
傍目にも分かる状態になる。

ここが問題で
ヤクザの子でもネグレクトされてる子でも
孤立してくわけです。
で、近づいてくるのは闇社会の人だけ。

そしてまたヤクザ、もしくは
ヤクザの女が仕上がるという仕組みです。

とにかく教育がないから
子どもたちもなんか変と思っても
人生の進路を変更できない。

親に売られたり（13歳で実母にソープに
売られた子まで登場してます）、自ら
親の背中を見る形で憧れて
ヤクザになったり。

そこに耐えられない子は自殺するしかない。
カタギで生きて行きたくても
親がヤクザとバレれば何もかもおしまいなので。

家庭の形をヤクザのそれしか
知らないので、散々自分にひどいことしてきた
親を助けて生きていくのが夢とか
本気で言い出す子もいる。

クズがクズを生む構造ですが
例えばこういう子たちに
ちゃんと学校へ行けとか
言っても意味がないんですね。

石井光太はそういうところを
よく見ていて、彼らを排除しようとする場に
送り返しても解決にはならないところを
書いています。

同じ風俗の仕事でも
ちゃんと彼らの、身体を守って
搾取されずに働ける場所で
働いていければ、それも
ひとつの道なわけです。

ヤクザとか、売春の世界で
生きてる若い人を見たら
そんなことはやめろ、と
言うのが普通の反応でしょうが、やめて
どうするんだ、という現実があるわけです。

しかし幼児期から教育を
遠ざけられた子供というのは
本当に悲惨ですね。

教育の機会を奪われて
ろくに食べ物も与えられず
注射器はその辺に転がってるんだから
ゆく道がひとつなのもよく分かります。

警察の資料で
覚醒剤の経験者が
昭和50年代の統計で
成人人口8000万人のうち
200万人とあり、これは
なかなかの数だと思いました。

偏頭痛に悩まされてる人が
現在800万人という統計だった気がするので
それを考えても想像より
多かったです。

あと、暴走族は
集会のたびに地元を仕切るヤクザに
ひとり幾らとか払う仕組みというのも
初めて知りました。

他にも年末にはカレンダー100万円ぶん
買わされるとか、暴走族も
上納金システムにしっかり入ってるんです。

名作青春漫画
「ホットロード」の春山も
上納金払って走ってたのかなあと思うと
興が冷めますね。

DJ KAZURU