将棋のことって全然知らなかったのですが
こんな面白い人が
将棋界に存在したんだね！　というのが
まずは、の読後感でした。

団鬼六先生は
SM作家ですが、将棋への関心も
とても大きくて、借金まみれの
将棋雑誌の経営を引き受けたり
将棋界に尽力なさった方。それだけに
愛のある「実録」になっております。

真剣師。小池重明。

酒と荒んだ生活がたたって
肝硬変にて４４歳で死去。

将棋の才を認められ名を馳せたものの
借金と女で身を持ち崩し
寸借詐欺騒動の果て
なけなしの金を握って出かけた
競馬場にて大穴を当て、９０万円の
払戻金。それを
ソープとまたしても競馬にて
使い果たし残金１５０円。土方の飯場に流れ着く
・・・これがものの一週間の出来事であったと
いうからあきれ果てますが
彼はこういうことを再三繰り返しております。

金の持ち逃げ数知れず
人妻との駆け落ちは三回に及んだといいますから
風変わりには違いないですが
将棋は実に強かったようです。

名人との一戦の前夜も
「明日勝てばパトロンからの
金が入る」ということで
バーで散々飲んだくれていい気になった挙句
喧嘩沙汰、留置場に入れられ
翌日ぼろぼろで姿を見せた小池が
勝利を収めてしまった、なんて
エピソードは大好き。

素行の悪さから
当然、将棋界から見放されて
キツイ肉体労働に従事したりと
人生転がっていくわけですが
その惨めさは「これぞ苦役列車」という様相。

多くの人に嫌われた一方
多くの人に愛された、と
団鬼六先生は書いてらっしゃいますが
魅力的な人物に感じてしまうのは
団鬼六の小池氏に対する
愛情の深さゆえ、でしょう。
この才能を見過ごせなかったのね。。。

(DJ KAZURU)