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2/10 復活TIM★CUBA

17568 2/10 麻布トロピで久しぶりに ティンクーバやります。 DJ KAZURU が昔作った キレッキレのリミックス中心。 翌日が祝日なので ゆっくりお楽しみいただければ幸いです ************** La Tropi Azab..

2/1 イサックを語る

17586 下北沢ボデギータで 福田カズノブがイサックデルガードを語る マニア向けのイベントです キューバ料理もご注文いただけます ..

2014-0105koi

小池真理子著
「恋」拝読。

ほんの一年、二年ばかりの
甘美な思い出のために
残りの人生すべてを
投げ出してもいい、と。

そんなふうに思えることって
あるだろうか。

1970年
二十歳の貧乏な
地方出身の女子大生であった
主人公は
翻訳の手伝いという
アルバイトを見つけ
30歳代の私大助教授と
20歳代の旧子爵家の
令嬢夫婦に出会う。

ブルジョワを絵に書いたような
夫婦の生活に巻き込まれるうちに
夫も、妻も
その両方を愛していく主人公は
充足を感じ、この生活が
一生続けばいいとすら思う。

昭和40年代には
まだ珍しかったであろう
「官能的な内容の英文学」
「軽井沢での別荘生活」
「六本木のイタリアンレストラン」
「ガーデン・パーティー」
「猟を愉しむ」
などの描写とともに
主人公は夫婦の人生に
深くかかわっていく。
ふたりの存在なしには
生きている価値もないと思うほどに。

しかし
偶然のように現れた若い男と
妻が
恋に落ちて、そのバランスが
乱れた時、主人公はその男を
銃殺する、という排除の行為に出る。
そして
死ぬまで
本当の「殺人の理由」を明かさず
ひっそりと人生を終える。

とにかく
美しい小説でした

華麗で奔放な生活や
男女関係の裏には
思わぬ「秘密」があることが
徐々にわかってくるのですが
その秘密さえ
甘美なもの。

主人公は
殺人犯となり
刑に服し、死ぬまで
ずっと
「夫婦の秘密を守ったこと」

自分は彼らにとって
特別な存在であり続けることを
よすがにするのですが
面会もかなわないので
夫婦が自分をまだ愛してくれているかも
分からず
失意のまま死を迎えます。

小説の中で
この夫婦と女子大生の
結びつきは
「高級別荘地での
猟銃殺人」なる
センセーショナルな事件を経ても
変わらない強さがあったことに
たどり着き、結びとなるのですが
主人公にそれはわからなかった・・・
非常に残酷。

残酷で、美しくて
よくぞこの小説を
「恋」と名付けたものだ、と
感嘆。

小池氏の短篇
「たんぽぽ」に

死して後、
自らの亡骸と共に
焼き尽くすべき恋もある。
そして
自分たちはそんな恋をこそ
密かに育んできたのだ、と
佐代子は今も考える。

そこには感傷も安堵もない。
あるのは静かに張りつめた、二人を
つなぐ細い糸だけであり、その
今にもぷつりと千切れてしまいそうな
細い糸にすがりながら
佐代子は五十六の
今になるまで生きてきたのだった。

という
文章がありますが
ここにも同じテーマを見て取れます。

「たんぽぽ」は2002年に刊行された
「夜の寝覚め」の収録作品。

「恋」は
1996年の直木賞作品でもあります。

(DJ KAZURU)


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