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2023イヴェント休業中、各コラム更新中《TIMCUBA動画有》

18644 2023年現在timcubaのイヴェント休業中です。 コラムは随時更新していますので 各メニューを選択してくださいませ。 https://youtu.be/BELIZJu0ruM 2014年の過去動画ですが 六本木で思いきりダンスと音楽を味..

2/10 復活TIM★CUBA

17568 2/10 麻布トロピで久しぶりに ティンクーバやります。 DJ KAZURU が昔作った キレッキレのリミックス中心。 翌日が祝日なので ゆっくりお楽しみいただければ幸いです ************** La Tropi Azab..

2/1 イサックを語る

17586 下北沢ボデギータで 福田カズノブがイサックデルガードを語る マニア向けのイベントです キューバ料理もご注文いただけます ..

ぼんち

山崎豊子 著
「ぼんち」拝読。

昭和36年発行

毎月1日と15日には着物から
襦袢下着に至るまですべてさらに
取り替える、という
描写から始まるこの小説。

船場の足袋屋の若旦那の
贅沢な衣装の話(猿股は毎日履き捨て)に始まり
その女系家族を支える母と祖母の
権高でしきたりを重んじる態度から
ものの数ページで、これは面白い話が
始まるぞと分かります。

迎えた嫁が厠を使えば、すぐさま
月のものがなくなってはいないか
竹の棒で便器をかき混ぜてチェックする
姑の陰湿さに度肝を抜かれました。

大正から昭和初期の商家の
女というのはこういう処に
身をおいていたのです。

始終、上から目線で難癖つけ
長男を産み落とした矢先に離縁を突き付け
嫁を追い出す。
そんな母と祖母に抗うように
「ぼんちの女遊び」が始まります。

お座敷で見つけた華やかで若い芸者。

その若さに飽きると控えめな女へ。

それにも物足りなくなると
機転の利く年上の中居頭。

次は洋装の似合うカフェの女給。

更には女遊びにとどめをさすように
舞妓の水揚げ。

女を渡り歩くのではなく
すべて、ひとたび関係を持った女には
一軒構えさせ女中を雇い、
世間に恥ずかしくないよう
衣装から何から何まで生活費を渡すのです。

これは当時のしきたりで
東京でも同様ですが
ものすごい出費です。

家業の商売も上手くいっていなければ
続きません。

船場、北浜、宗右衛門町
千年町、高麗橋と
地名は変わりませんが様子も文化も
変わり果てた大阪です。

こんな男も女ももう存在していませんし
ふざけた金の使い方も到底出来ませんが
やはりそこは独特の香りがある
文化に違いないのです。

自分がこの時代船場で商いをする家の
女であったら、妾の挨拶を受け
上等の白の絹地を権高な態度で渡すでしょうか。

芸者になってせっせと
お金や宝石を溜め込むでしょうか。

実に不思議な世界です。

大阪船場の商人と色事を
垣間見た気持ちですが、どの場面も
着物の描写がそれはそれは克明で
着るものはその人そのもの、だと
分かります。

どのような生き方をしているかで
髪の結いかたも
選ぶ着物もおのずと決まるのですが
現代では「ぼんち」が一般サラリーマンと
同じTシャツを着ることも
普通ですので、まあつまらん時代に
なったものです。

20歳台の頃から女遊びを続け
戦時下でもしぶしぶ国民服で
妾宅まわりを続けた「ぼんち」も
大阪空襲で家が焼失するときには
40歳をとうに越えています。

彼の生きた時代というのが
船場商人のありようが大きく変わる
時期だったのでしょう。

しきたりにこだわって譲らなかった
祖母も、世の中の変貌に耐えきれず
自ら命をたつのが哀れです。

当時のミナミ界隈の風俗と、
女の生き方がよくわかる小説でした。

自分のスタイルを頑なに守る生き方は
現代の感覚からすれば
不自由なように思われるものでしょうが
なんでも好きな生き方を選べる今の人たちが
すべからく
幸福を掴めている訳でもないでしょう。

わたくしはこのような小説が
たまらなく好きです。

DJ KAZURU


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