街場の大阪論　　江弘毅著

大阪では超有名なコラムニスト氏ですが
彼のいう「街」とは昔から存在している
うどん屋さんだったり、そういうものが並ぶ
通りで育った子供が大きくなって開業した
ビストロであったり飲み屋であり、たとえ
同じ一画に在ったとしてもマクドナルドや
スタバはこれに入りません。

街で真剣に商売している人たちと
其処に集う人々こそが豊かな「まち」を
作っているのだということを延々ととくわけですが
いちいち正統なご意見です。
私が大阪に少しでも住んでいたからこんなに
面白いのかしら？　

たとえば北新地のクラブのママ（玄人代表）が
キャバクラの進出（店では時給で適度に働いて店外デートで
大きく稼ごうという素人集団）で売上が下がってしまったことを
憂えているというくだりでは

「一体どちらが玄人でどちらがシロウトなのかが
分からない」

とし、

「こういった玄人はだしのシロウトは街場では
伝統的に堅気の側でもあちらの側でも
禁忌してきたはずだ。なぜならその
’ちょいワル’感覚は’チンピラ’そのもので
とても気持ち悪くて恰好悪い」

と、ばっさりであります。

そして、数年前に道頓堀に
大阪を象徴する串焼き屋やたこ焼き屋らを
テナント誘致した大阪・食のテーマパークみたいなのが
出来て、数年で閉鎖したのですが、それについても
「ある種の商売に関しての違和感」を明示しています。

それぞれが細々と商売しているところに
（細々と言ったって有名店ばかりなのだから
それで悪いことは何もない）資本力があるから
というだけのことで、ずかずかと乗り込んできて
さあ、私がみんなのまとめ役になりますよ
大阪の食文化を盛り上げましょう、と
いうのは結局、さあみんなで儲けましょう
ということで、本当は食のことなんか
どうでもいいのです。

江氏いわく
「道頓堀という記号と人の集まり具合に
惹かれて東京や海外から資本が進出してきても
うまくいかないとなるとすぐに撤退する。
それは企業活動だから当然のことであろうが（中略）
そういう徹底した金儲け主義に道頓堀は
’えげつないな’と回答している」

えげつないな、というのが江氏らしい
言い回しでありますが、標準語的にいうと
「下品」というのがまあ適当でしょうね。
下品の中には悪くない下品もあるのですが
この場合の下品は只の下品。

(DJ KAZURU)