平野啓一郎氏
「かたちだけの愛」拝読。

直球恋愛小説で、とても読みやすい
手法が採られていました。氏の良さがまた一つ
見えた感じ。

美しい足を持った女優が事故に遭うことで
得る、足の消失と再生の物語が、主人公である
インダストリアルデザイナーの女性への愛の
再生の物語と並行して描かれるのですが
そこには主人公の「母」の存在により与えられた
苦渋の家族の物語などが組み込まれ
重層的に語られます。

随所に谷崎潤一郎氏の「陰翳礼讃」が
引用されるので改めて読みたいと思いました。

平野氏がどこかで
三島に比較して谷崎の愛の感覚を論じていて
興味深かったのですが「刺青」を例にあげられれば
なるほどという感じもあります。

小説の終盤
女性は主人公のデザインした義足（想像するだけで
素晴らしく美しい発想です）をつけて
パリコレのランウェイを見事歩くのですが
ふたりの年齢設定といい、どうしても平野氏と
実生活の奥様であるモデル春香嬢の
イメージが重なります。

平野氏も、あまりに整い過ぎた妻を見て
「なんとなくわからない感じ」を
抱くことはあるのでしょうか。

サイン本ゲットです。

(DJ KAZURU)